梅田 (足立区)

東京都足立区 梅田

東京都足立区の中央部に位置する梅田は、一丁目から八丁目に区画された町域です。その周囲は、北側で梅島、東側で足立、南側では荒川を隔てて千住、そして西側では関原や西新井栄町といった地域と隣接しています。

地名の起源

「梅田」という地名の由来は、江戸時代に編纂された地誌『新編武蔵風土記稿』にその手がかりが見られます。記述によると、かつてこの一帯は大河の河口付近に広がる沿岸地域であり、海に面していました。河口部特有の豊富な堆積物が広がる低湿地であったため、この地を埋め立てて新たな田が開墾されたといいます。当初、この埋め立てられた土地は「埋田（うめだ）」と呼ばれていましたが、それが時代を経てより美しい響きを持つ「梅田」へと変化したと伝えられています。当時の地理的な状況、すなわち東京湾からの距離がさほど遠くないことや、旧荒川（現在の隅田川の一部）が大きく蛇行して流れていたことなどを考慮すると、梅田が開発された頃には、この地域が荒川の河口に近い入り江のような地形であったことが推測されます。ちなみに、大阪市北区にある繁華街として知られる梅田も、同様にかつては低湿地を埋め立てて「埋田」と呼ばれていたことに由来するとされています。

歴史的変遷

梅田の歴史は古く、江戸時代の初期まで遡ることができます。戦前の時期には足立区梅田町として存在していましたが、1965年（昭和40年）に住居表示が実施されたことにより、現在の梅田一丁目から八丁目の町域が定められました。昭和初期には、この地域を経由する筑波高速度電気鉄道の建設計画が構想されましたが、計画段階で中止となり、幻の路線として歴史に残っています。

地盤沈下との戦い

足立区内は地下水が豊富な地域であり、梅田も例外ではありませんでした。特に、浦和方面から流れてくる地下水脈は、地域の基幹産業であった製紙業や、住民の生活用水として大変重宝され、大量に利用されていました。しかし、過度な地下水の揚水は、深刻な事態を招きます。1897年（明治30年）頃から始まった地盤沈下は年々進行し、1965年（昭和40年）までには約2メートル近くも土地が沈降するという異常事態となりました。このままでは水害のリスクがさらに高まるとの危機感から、1966年（昭和41年）には当時の通商産業省によって地下水の揚水が全面禁止され、地域に存在した多くの井戸が廃止されることになりました。この出来事は、地域の産業構造や人々の生活に大きな転換をもたらしました。

現在の梅田

今日の梅田は、主に住宅地としての性格が強い地域です。2024年（令和6年）の地価調査においても、住宅地として一定の評価を得ています。交通の面では、東武伊勢崎線の梅島駅が最寄りの鉄道駅であり、都心へのアクセスを担っています。また、都営バスの路線網も整備されており、町域内には都営バスの千住自動車営業所も置かれています。主要な道路としては、日本の大動脈の一つである国道4号線（日光街道）が通り、かつての日光街道である東京都道103号線や東京都道450号線なども地域を縦横に走っています。南側には荒川に架かる千住新橋があり、千住方面との往来を容易にしています。

生活関連施設も充実しており、梅田区民事務所、足立区立梅田図書館、梅田住区センターといった公共施設のほか、足立区立梅島小学校、足立区立梅島第二小学校、足立区立第九中学校などの教育機関も設置されています。また、足立梅田郵便局や女性総合センター（Lソフィア）なども地域の利便性を高めています。

歴史と文化に触れる

梅田には、古くからの歴史を物語る史跡や寺社が今もなお多く残されています。明王院、善立寺、眞福寺といった寺院や、梅田神明宮、梅田稲荷神社、佐竹稲荷神社などの神社は、地域の信仰と歴史の中心となってきました。庚申塔や石不動、弁財天なども地域各所に点在しています。さらに、旧梅島役場跡や梅栗小学校跡といった場所は、地域の近代史を知る上で貴重な手がかりを与えてくれます。

その他、かつて力士の育成で知られる玉ノ井部屋がこの地に所在した時期もあります（現在は同区西新井に移転）。また、日本を代表する女優の一人であった田中好子さんも足立区梅田の出身として知られています。地域の郵便番号は123-0851であり、集配業務は足立西郵便局が担っています。

このように、足立区梅田は、かつての「埋田」としての地理的特性から始まり、地盤沈下という困難を乗り越えながら発展してきた歴史を持ち、現在も多くの生活施設と古くからの歴史遺産が共存する、魅力ある地域と言えるでしょう。

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