梅素亭玄魚

梅素亭玄魚（ばいそてい げんぎょ）

梅素亭玄魚（1817年 - 1880年）は、江戸時代後期から明治時代にかけて活躍した浮世絵師です。本名を宮城喜三郎といい、梅素亭、玄魚、整軒など、多くの号を用いています。

生涯

玄魚は文化14年（1817年）、本石町4丁目の大経師である宮城貞雄（喜斎玄魚）の長男として生まれました。父は国学を岸本由豆流に学んでいました。15歳から20歳までは浅草諏訪町で書画骨董商の金子吉兵衛のもとで過ごし、後に筆耕を生業としました。

絵は独学で習得し、弘化年間から作画を始めたとされています。安政の頃から、合巻やシリーズ物の錦絵の袋絵、目録図様、千社札、摺物の図案などで独自の才能を発揮しました。特にビラ絵の名手として知られ、安政2年（1855年）の大地震の際には鯰絵を考案し、好評を博しました。慶応の頃まで活躍を続けました。

玄魚は、仮名垣魯文ら三題噺の愛好家が集まる粋狂連の一員であり、芝居を好みました。「団十郎老爺」と戯号して六二連の幹事を務めました。六二連は芝居小屋の土間6側目の2を定位置に観劇する見巧者（芝居通）の集まりで、玄魚のほか、高須高燕や富田砂燕が中心となって劇評を行い、1878年には『俳優評判記』を刊行しました。六二連の人々は「江戸時代の通人を明治の世に生き延びさせたような人たち」と評されました。

浅草黒船町の自宅が火災で焼失した後は、両国吉川町に仮住まいをしていましたが、1880年に病気のため死去しました。享年64歳。遺体は天王寺 (台東区)に埋葬されました。死後、魯文は雑誌に追悼文「梅素小伝」を発表し、玄魚を偲びました。玄魚は気付け薬「宝丹」の販売元として知られる守田治兵衛とも親交がありました。

家族

玄魚の子に梅素薫がいます。

玄魚の子の宮城喜三郎を襲名した人物が、明治11年（1878年）に「梅素亭 宮城商店」を浅草区三好町に開店し、化粧品の「名題洗粉」を販売しました。この洗い粉は「楽屋つかい名題洗粉」として明治期には広く知られる人気商品となり、大正期には昔ながらの豆粉を原料とする唯一の商品として洗粉の代名詞とも言われました。店先には玄魚の看板が掲げられていました。

その後、家業は廃業し、次代の宮城喜三郎（1891年生、宮城惣吉三男）は東京高等工業学校電気科を卒業後、芝浦製作所に勤務し、田園調布に暮らしテニスを趣味としました。その長女である宮城黎子と長男である宮城淳は、著名なテニスプレーヤーとして活躍しました。

作品

「名所江戸百景の目録絵」 大判 安政5年（1858年）
「写真鏡 風船図」 大判 文久元年（1861年）
「末広五十三駅図会 目録」 大判 慶応元年（1865年）

参考文献

日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』第2巻 大修館書店、1982年

外部リンク

梅素亭玄魚浮世絵文献資料館
「東京自慢名物会 梅素亭 宮城 名題洗粉」豊原国周、1897

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