梱包爆薬

梱包爆薬とは、一定量の爆薬を携行しやすいようにパッケージングし、信管を取り付けて使用する兵器のことです。工兵資材として、障害物の破壊や敵陣地への攻撃に用いられることが一般的です。例えば、敵が設置したバリケードを排除したり、建造物に穴を開けて侵入経路を確保したりする際に使用されます。また、敵の掩体壕や装甲車両に対する肉薄攻撃にも用いられることがあります。

梱包爆薬は爆破解体にも使用されますが、その主要な目的は戦闘での使用を想定している点にあります。ダイナマイトやC-4プラスチック爆薬といった高威力の爆薬が用いられ、発火装置付きのバッグに収納して携行されます。梱包爆薬には、制式兵器として開発されたものと、即席で作られたものが存在します。

歴史

梱包爆薬の起源は、工兵が手持ちの爆薬と点火装置を組み合わせて、その場の状況に応じて即席で作成していたことに遡ります。構造物を爆破するという行為自体は、火薬の登場以来広く行われてきました。特に攻城戦においては、坑道や塹壕を掘って城壁に近づき、爆破して進入路を作るという任務が工兵に課せられていました。

初期の火薬は現代よりもはるかに扱いが危険であり、専門家である工兵が取り扱う必要がありました。信管の発明によって扱いやすさは向上しましたが、依然として専門的な技能が求められました。その後、工兵以外でも扱いやすいようにパッケージングされた梱包爆薬が登場しました。一説には、冬戦争前夜の1936年にフィンランドの司令官カーッロ・トゥルナによって開発されたとも言われています。

第一次世界大戦で戦車が登場すると、梱包爆薬に対戦車兵器としての新たな役割が加わりました。当時、兵士が携行できるロケットランチャーのような投射手段は未発達であり、火砲は機動性に欠けていました。対戦車銃は戦車の乗員や部品を撃ち抜くことはできても、戦車そのものを破壊するには至りませんでした。

敵戦車を無力化するためには、危険を冒して肉薄し、大量の爆薬を設置して爆破するという方法が確実でした。当初は爆薬の専門家である工兵がこの任務を担っていましたが、訓練を受けた兵士であれば扱える梱包爆薬が登場したことで、歩兵部隊でも対戦車能力を持つことが可能になりました。肉薄攻撃は敵の反撃を受ける危険な任務であるため、予め適切な調整がされたパッケージが求められ、梱包爆薬は洗練されていきました。

第二次世界大戦

第二次世界大戦では、工兵は鉄道、障害物、掩蔽壕、洞窟、橋梁といった巨大な目標物を爆破解体するために梱包爆薬を使用しました。アメリカ陸軍では、8個に分割された高性能爆薬と2つの信管取り付け器具からなるM37解体機材がキャンバスバッグに収納され、ショルダーストラップで運ばれました。使用時には、バッグを振り回して目標に投げ込むという方法が用いられました。

梱包爆薬は、目標に直接設置するか、開口部に投げ込んで使用されました。爆発には通常、拉縄（信管を点火させる引き紐）が用いられました。対戦車戦闘では、戦車の転輪や履帯などの装軌部分を狙うことで、大きな損傷を与えることができました。

日本軍

日本軍は、対戦車兵器が質・量ともに不足していたため、肉薄攻撃を多用していました。ノモンハン事件では、ガソリンエンジンの車両に対して火炎瓶で機関部を炎上させることができましたが、第二次世界大戦時にはディーゼルエンジンの戦車が一般的となり、この方法は通用しなくなりました。歩兵による肉薄攻撃には主に九九式破甲爆雷や対戦車地雷が使用されましたが、これらの兵器では戦車を完全に破壊するには威力不足であり、工兵の梱包爆薬（通称「布団爆弾」または「布団爆雷」）に頼らざるを得ませんでした。さらに物資が欠乏するようになると、梱包爆薬を簡易化した急造爆雷が使用されるようになりました。

理想的な対戦車戦術は、火力支援で敵歩兵を排除した後、爆雷や地雷で履帯を破壊して動きを止め、その後に梱包爆薬で破壊するというものでした。対戦車戦闘における布団爆弾の使用方法は、戦車の機関部上面に設置し、約10秒の猶予がある時限式の信管から安全装置を引き抜いて起爆装置を作動させ、安全圏へ退避するというものでした。急造爆雷の場合は、戦車の底面と地面の隙間に差し込んで起爆するという方法が用いられました。

しかし、実際にはそのような余裕がない場合が多く、敵戦車を確実に止めるために爆薬を背負った兵士が自分もろとも戦車を爆破する自殺攻撃も行われました。大戦後半には、日本軍の対戦車砲では破壊困難なM4中戦車が戦場に投入され、追い詰められた日本軍は梱包爆薬や刺突爆雷による自殺攻撃を多用するようになりました。本土決戦においては、一般国民を国民義勇戦闘隊に動員することになり、正規軍ですら兵器不足が深刻な状況で満足な対戦車兵器は支給されなかったため、爆薬を背負っての自殺攻撃が想定され、学徒などに対して訓練が行われたと言われています。

戦後

戦後のアメリカ軍では、M183解体爆薬機材（M183 Demolition Charge Assembly）にC-4爆薬9.1kgを収納し、時限式信管で使用することができました。イラク戦争における第二次ファルージャ戦では、アメリカ軍は敵に占拠された家屋の一部屋ずつを歩兵で掃討する代わりに、M2 20ポンド戦闘用爆薬で家屋を爆破しました。

特殊部隊の任務では、特別な目標を破壊するために改設計された梱包爆薬が使用されることもあります。

もう一度検索