森田実

森田実：日本の政治を鋭く見つめた評論家

森田実（1932年 - 2023年）氏は、日本の政治評論家として長年に渡り活躍しました。東京大学工学部鉱山学科を卒業後、日本共産党に入党。全日本学生自治会総連合の指導部を担い、戦後日本の主要な政治運動に積極的に関与しました。その後、日本共産党を除名され、共産主義者同盟（ブント）の結成にも関わっています。

日本評論社出版部長や『経済セミナー』編集長を経て、1973年からはフリーの政治評論家として活動。東日本国際大学客員教授も務め、2015年には山東大学より名誉教授の称号を授与されています。森田総合研究所代表取締役も兼任していました。

保守本流と新自由主義への批判：揺るぎない信念

政治評論家としての森田氏は、保守本流である自由民主党宏池会を支持し、その経済重視路線や平和外交を支持していました。しかし、2003年頃からの自由民主党や宏池会の分裂後、亀井静香氏らへの支持へと転換するなど、柔軟な姿勢も見せています。

一方で、新自由主義路線への批判は一貫していました。小泉純一郎政権以降の郵政民営化や構造改革路線を強く批判し、雇用と社会保障重視の修正資本主義路線への回帰を提言。公共事業の必要性や、談合を日本の古き良き慣習と肯定するなど、独自の主張を展開しました。

小沢一郎氏への評価も複雑です。かつては「闇支配」を批判しながらも、民主党代表就任時には大絶賛するなど、その時々の政治状況に応じて評価を変化させています。しかし、ISAF参加構想や陸山会事件を巡っては、小沢氏を厳しく批判しました。

正確な予測と願望：二面性を持つ政治分析

森田氏は、選挙結果の予測でも知られていました。1989年の参議院選挙での社会党大勝を「終わりの始まり」と予測するなど、中期的な展望においても高い精度を示したこともありました。

しかし、21世紀に入ると、予測に自身の希望が反映される傾向が強まり、正確性は低下。特に自民党の勝利を予想する際は、願望が色濃く反映されていたように見えます。小泉政権や安倍政権の動向予測において、その傾向は顕著に表れています。

多様なメディア活動と豊富な著作

ニッポン放送やフジテレビ系列『めざましテレビ』など、長年多くのメディアに出演。郵政解散における自民党圧勝を「電通の力が大きい」と主張したことがきっかけとなり、テレビ出演は減少しましたが、インターネットや講演活動を通して発信を続けました。

著書も多く、『公共事業必要論』や『小泉政治全面批判』、『「小沢一郎」入門』など、政治経済に関する様々なテーマを扱っています。晩年は公明党を支持し、関連する雑誌への寄稿も多数行っています。

まとめ：時代を映す鏡

森田実氏は、激動の時代の日本の政治経済を独自の視点で分析し、発信し続けました。保守本流を支持しつつも新自由主義を批判、正確な予測と願望が混在する分析、多様なメディア活動と豊富な著作など、その活動は多角的で、複雑な人物像を浮かび上がらせています。森田氏の活動は、日本の政治史を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。彼の残した著作や発言は、今後も多くの議論を呼ぶことでしょう。

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