楊原神社

楊原神社の由緒と歴史

楊原神社（やなぎはらじんじゃ）は、静岡県沼津市下香貫に位置する神社です。その起源は定かではありませんが、古くからこの地で信仰を集めてきました。式内社（名神大社）であり、かつての社格は郷社でした。

祭神

主祭神は、大山祇命（おおやまつみのかみ）です。また、配祀神として石長姫命（いわながひめのみこと）と木花開耶姫命（このはなのさくやひめのみこと）が祀られています。

歴史

創建時期は不明ですが、戦国時代に現在地に移される以前は、現在の場所から東南東約500mの沼津市楊原に鎮座していました。初めて国史に登場するのは、『日本三代実録』の貞観元年（859年）の記述で、従五位上の神階を授けられたと記されています。『延喜式』神名帳には、伊豆国田方郡に「楊原神社 名神大」と記載されており、田方郡で唯一の名神大社として名を連ねています。また、『伊豆国神階帳』には「従一位 やきわらの明神」と記されています。

しかし、現在の社地や旧社地を含む狩野川左岸は、近世以降は駿河国に属していたため、名神大社としての比定には疑問も呈されています。この点については、「楊原」という地名が残っていることや、周辺から多くの遺跡が出土している状況から、この地に名神大社が祀られたことの合理性が認められます。そのため、『延喜式』以降に駿河と伊豆の国境が移動したとする説もあります。

かつては上香貫村、下香貫村、善太夫神田、我入道が氏子区域であり、「大宮大明神」「香貫大明神」「松彦大明神」とも呼ばれていました。戦国時代には、北条氏や武田氏の兵火によって社殿などが焼失しましたが、天正18年（1590年）に楊原の地から現在の場所に移され、再建されました。当時、当社は500石の社領を持ち、8つの別当寺と30余りの社家を有する大社だったと伝えられています。

明治8年（1875年）2月には、近代社格制度において郷社に列せられました。

神階

六国史に記された「楊原神」に対する神階奉授の記録は以下の通りです。

貞観元年（859年）1月27日：従五位下から従五位上（『日本三代実録』）
貞観12年（870年）5月29日：正五位下（『日本三代実録』）
仁和2年（886年）11月25日：正五位上（『日本三代実録』）
従一位（『伊豆国神階帳』） - 表記は「やきはらの明神」。

境内

境内には、本社のほか、以下の摂末社があります。

摂社

吉田神社：例祭は10月14日。本社に向かって右手に鎮座しています。安政5年（1858年）の疫病流行の際、その退散を願い京都の吉田神社から勧請されました。当初は下香貫の掃除ヶ峰に祀られていましたが、明治28年に境内に移されました。

末社

八幡神社：祭神は誉田別命
少彦名神社：祭神は少彦名命
津島神社：祭神は須佐之男命

関係社

楊原神社に関連する神社として、以下の二社があります。

大朝神社

鎮座地：沼津市下香貫山宮前3056-2
祭神：大日孁命（おおひるめのみこと）
社格：式内社「大朝神社」論社、旧村社
例祭：1月16日

「おおあさじんじゃ」と呼ばれ、楊原神社から南西に約1.5km、海に面した牛臥山の南麓に鎮座しています。祭祀の母体や内容が楊原神社と共有されており、一体の存在と考えられています。古くは楊原神社との間に浅瀬が広がっていたと考えられ、当社は海に浮かぶ小島に祀られた山宮であったと推測されています。

楊原神社

鎮座地：三島市北田町4-7
祭神：事代主命、大山祇命
社格：神階帳「従一位 やきわらの明神」か、伊豆国三宮か

「やなぎはらじんじゃ」と呼ばれ、三嶋大社の元摂社です。三島にあった国府から沼津の楊原神社を遥拝するための拝所であるという説があり、神階帳の記載は当社を指すとも言われています。別説では、沼津の元社地が駿河国に編入されたことにより中島に遷祀され、その後、徳川家光が同地に御殿を営む際に現在の三島市北田町に移されたとされています。例祭は7月5日です。

祭事

楊原神社では、年間を通して様々な祭事が行われています。

歳旦祭（1月1日）
例大祭：楊原神社と大朝神社が共同で行います。両社の神輿が大朝神社近くの我入道浜に渡御し、神輿をかついだまま海に入る「御輿洗いの儀」が行われます。
神輿洗いの儀（1月15日）
大朝神社例祭（1月16日）
楊原神社例祭（1月17日）
建国祭（2月11日）
春季大祭（3月16日）
大祓（6月30日）
吉田神社例祭（10月14日）
新嘗新穀感謝祭（11月20日）
大祓（12月31日）

現地情報

所在地

静岡県沼津市下香貫宮脇335

交通アクセス

最寄駅：JR東海道本線・御殿場線 沼津駅（徒歩約30分）

バスやレンタサイクルの利用も可能です。

脚注

注釈と出典については、原文を参照してください。

参考文献

神社由緒書
秋山章纂修、萩原正平増訂 編『増訂豆州志稿 巻八上』
明治神社誌料編纂所編 編『府県郷社[[明治神社誌料]]』
三島市誌編纂委員会編 編『三島市誌 下』
『日本歴史地名体系 22 静岡県の地名』
神野善治 著「楊原神社・大朝神社」、谷川健一編 編『日本の神々 -神社と聖地- 10 東海』

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、楊原神社に関するカテゴリがあります。

外部リンク

楊原神社 - 静岡県神社庁

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