楊奥妃

楊奥妃（よう おうひ、481年 - 509年12月9日）は、北魏の皇族である京兆王・元愉（げんゆ）の妻であり、西魏の文帝・元宝炬（げん ほうきょ）の母です。字（あざな）は婉瀴（えんよう）といいました。

生涯

元愉が徐州にいた頃、彼女の歌声に惹かれた元愉は楊奥妃を側室としました。その後、元愉は刺史を退任して洛陽に戻ると、楊奥妃を正室に立てようと画策します。右中郎将の李恃顕（り じけん）を楊奥妃の義父とし、彼女に李姓を名乗らせました。しかし、宣武帝（せんぶてい）は皇后・于氏（うし）の妹を元愉の正室として嫁がせます。元愉はこれを不満とし、于氏と会おうとしませんでした。怒った于皇后は李氏（楊奥妃）を宮中に召し出すと、彼女を殴り倒し、尼にすることを強制しました。しかし、翌年、皇后の父である于勁（う けい）の願いにより、李氏は元愉のもとに帰されることとなり、元愉は以前にも増して彼女を愛しました。

508年（永平元年）8月、元愉は冀州（きしゅう）で反乱を起こし、「建平（けんぺい）」と改元して皇帝を自称し、李氏を皇后に冊立しました。しかし、反乱は失敗に終わり、元愉は野王（やおう）で自害しました（一説には高肇（こう ちょう）に殺害されたとも）。当時妊娠していた李氏は洛陽に送還され、元愉の遺腹の娘である元明月（げん めいげつ）を出産した後、509年12月9日に処刑されました。悲劇的な結末でした。

宣武帝の死後、霊太后（れいたいごう）が元愉の子女を皇族の籍に戻し、元愉を臨洮王（りんとうおう）に追封し、楊奥妃を臨洮王妃に追封しました。さらに、535年に息子の元宝炬が西魏の皇帝として擁立されると、楊奥妃に皇后が追贈され、名誉が回復されました。

子女

元宝月（げん ほうげつ）
元宝暉（げん ほうき）: 幼主・元釗（げん しょう）の父
元宝炬（げん ほうきょ）: 西魏の文帝
元宝明（げん ほうめい）
元明月（げん めいげつ）: 遺腹の娘、平原公主（へいげんこうしゅ）

伝記資料

『魏書』巻22 列伝第10
* 『臨洮王妃楊氏墓志銘』

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