楊定 (仇池)

楊定（よう てい）は、五胡十六国時代に存在した後仇池（こうきゅうち）の初代君主です。彼の家系は仇池の有力者であり、曾祖父は前仇池の第2代君主である楊難敵（よう なんでき）です。祖父は楊宋奴（よう そうど）、父は楊仏奴（よう ぶつど）と続きます。また、前秦の皇帝である苻堅（ふ けん）の娘を妻としていました。

前秦への仕官と自立

楊定の祖父である楊宋奴は、355年の内乱で命を落としました。そのため、父の楊仏奴は前秦へ亡命し、右将軍として仕えました。楊定自身もまた、前秦に仕え、尚書・領軍将軍という地位に就き、苻堅の娘婿となりました。383年10月の淝水（ひすい）の戦いで苻堅率いる前秦軍が大敗した後も、楊定は引き続き前秦に仕え続けました。

しかし、385年8月に苻堅が後秦によって殺害されるという事件が起こります。これを受けて楊定は、自らの部衆を率いて隴右（ろうう）へと逃れました。そして、同年11月には歴城（れきじょう）に移り、龍驤将軍（りゅうじょうしょうぐん）・平羌校尉（へいしょうこうい）・仇池公（きゅうちこう）を自称し、独立を果たし、後仇池政権を建国しました。

勢力拡大と西秦との衝突

建国後、楊定は東晋に服属し、自称していた称号を全て認可されました。390年には、天水（てんすい）・略陽（りゃくよう）・隴城（ろうじょう）・冀城（きせい）など秦州（しんしゅう）の各地を占拠し、隴西王（ろうせ いおう）を自称するなど、その勢力を拡大しました。

しかし、その勢力拡大は、西秦（せしん）の君主である乞伏乾帰（きつぶく けんき）との間に軋轢を生むこととなります。394年10月、両者はついに合戦に及びましたが、楊定は敗北を喫し、殺害されてしまいました。これにより、隴西も失うこととなりました。

楊定の死後、その地位は従兄にあたる楊盛（よう せい）が継承しました。

参考文献

* 三崎良章『五胡十六国 中国史上の民族大移動』東方書店、2002年2月。

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