榊原政敬

榊原政敬：越後高田藩最後の藩主の生涯

榊原政敬は、江戸時代末期から昭和初期にかけて活躍した、日本の華族です。正四位・子爵の位階・爵位を有し、越後高田藩の第6代にして最後の藩主、そして同藩の初代にして最後の藩知事を務めました。廃藩置県後も、大正14年（1925年）に隠居するまで、華族榊原家の当主としてその地位を保ち続けました。

激動の時代を生き抜いた生涯

榊原政敬は、弘化2年（1845年）2月4日、榊原政礼（高勝院）の長男として誕生しました。文久元年（1861年）、叔父である榊原政愛の死去に伴い、家督を継承します。

慶応2年（1866年）の第二次長州征討では、彦根藩と共に先鋒を務めましたが、旧式の軍装が災いし、近代的な装備を備えた長州藩兵に敗北を喫しました。これは、徳川幕府の先鋒として大きな痛手となりました。

鳥羽伏見の戦い後、高田藩は譜代大名としての立場から、徳川家の改易免除を政府に嘆願する一方、徳川慶喜に対し政府への謝罪を促すという微妙な立場を取っていました。しかし、佐幕派の旧幕臣古屋佐久左衛門率いる隊が高田藩領内を通過し、官軍の尾張藩や松代藩に攻撃を加えた事件が発生。高田藩は両藩から糾弾されますが、古屋隊を強襲したことで責任を問われることはありませんでした。それでも、尊皇の姿勢を示す必要に迫られた高田藩は、官軍の先鋒として戊辰戦争に参加。長岡藩や会津藩の征圧に参戦し、大きな戦功を挙げ、明治2年（1869年）には1万石の賞典禄を下賜されました。

明治2年（1869年）の版籍奉還により、高田藩知事に就任し、華族に列せられます。明治4年（1871年）の廃藩置県で藩知事を罷免されるまでその職に就きました。

廃藩置県後、旧高田藩札の精査で、政府に届けられていた額よりも1万3千両以上も多く発行されていたことが判明。会計方が規定額を超える藩札を貸し付け、利息を得ていた不正行為が明らかになりました。関係者8名が逮捕・処罰されましたが、政敬は政府への忠誠と功績を評価され、責任を問われることはありませんでした。

廃藩置県時の家禄は4841石でしたが、明治9年の金禄公債証書発行条例により、家禄と賞典禄（実額2500石）を合計した額と引き換えに、金禄公債13万1465円77銭5厘を受け取りました。これは華族受給者中54位に相当します。

明治17年（1884年）の華族令施行により、翌年、旧小藩知事として子爵に叙せられました。しかし、政敬は伯爵への昇爵を強く望み、明治22年（1889年）から明治33年（1900年）にかけて4度も請願を行っています。維新の功績を強調し、他の諸侯を例に挙げ、勝海舟にも取り成しを依頼しましたが、いずれも不許可でした。

男子に恵まれなかった政敬は、初め岡田家から政善を養子に迎えました。後に、旗本榊原家出身の政和を婿養子として迎え、大正14年（1925年）6月4日、彼に爵位と家督を譲り、隠居しました。昭和2年（1927年）、死去しました。

参考文献

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』リブロポート、1994年
石川健次郎「明治前期における華族の銀行投資―第15国立銀行の場合―」『大阪大学経済学』第22号、大阪大学経済学部研究科、1972年
刑部芳則『京都に残った公家たち: 華族の近代』吉川弘文館、2014年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社、2006年
霞会館華族家系大成編輯委員会『昭和新修華族家系大成 別巻 華族制度資料集』霞会館、1985年
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 上巻』霞会館、1996年
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年
村山和夫『高田藩』現代書館、2008年

もう一度検索