横浜地方気象台

横浜地方気象台について

横浜地方気象台は、神奈川県横浜市中区山手町に位置する地方気象台です。1927年に建てられた本庁舎は、アール・デコ様式の美しい建築物として知られ、現存する日本の気象台建築としては3番目に古い歴史を持ちます。この建物は、横浜市の有形文化財にも指定されています。

歴史

横浜地方気象台の歴史は、1896年（明治29年）に神奈川県測候所として始まったことに遡ります。当初は現在の中区海岸通に設置されていましたが、1923年（大正12年）の関東大震災で焼失。その後、仮庁舎での業務を経て、1927年（昭和2年）に現在地である山手の丘陵地に移転しました。移転の際、アメリカ海軍病院の跡地に建てられたのが、現在も残る本庁舎です。1939年には国営に移管され、横浜測候所と名称を改めました。1957年に現在の横浜地方気象台となり、現在に至ります。

2002年には耐震診断が行われ、建物の保存に向けた検討が開始されました。2007年には新たに第2庁舎が完成し、2009年には本庁舎の改修工事が完了しました。本庁舎と、その周囲を囲むブラフ積みの擁壁は、横浜市の有形文化財として指定されています。

建築

本庁舎は、鉄筋コンクリート造りの地下1階、地上3階建てで、アール・デコ様式の特徴を色濃く残しています。外壁はモルタル刷毛引き仕上げで、腰壁や玄関周りには富国石が使用され、その他の部分は白色の人造石洗い出し仕上げです。縦のラインと塔屋部の横のラインを強調したデザインで、装飾は玄関周りに集中しています。

内部は、1階に事務室や所長室、2階には図書室や晴雨計室、地下には地震計室などが配置されています。玄関ホールには木の一枚板を使った階段があり、曲線的な手すりや幾何学的な親柱が特徴的です。改修工事の際に、手すりの腰金物がアルミ鋳物で再現されました。

第2庁舎は、本庁舎との調和を考慮し、外壁の色合いや縦長の窓の形状がデザインされています。敷地外周は、古くから山手地区に見られるブラフ積みの擁壁で囲まれています。この擁壁は住民からの要望もあり、増改築の際に補強され保存されました。また、第2庁舎の基礎工事の際には、旧アメリカ海軍病院の井戸の遺構が発見され、井戸の上部が前庭に展示されています。

アクセス

横浜地方気象台へは、みなとみらい線元町・中華街駅から徒歩約7分、または神奈中バスや横浜市営バスで港の見える丘公園バス停から徒歩約3分でアクセスできます。

業務と観測設備

横浜地方気象台は、東京管区気象台の管轄下にあり、神奈川県内の気象観測、予報業務、地震情報などを提供しています。具体的には、地上気象観測、アメダスによる地域気象観測、生物季節観測などを行っています。また、神戸地方気象台や名古屋地方気象台とともに、港湾気象官が配置されているのも特徴です。

気象観測は、標高39.1mの丘陵地帯にある露場で行われ、気温、湿度、気圧、降水量、日照、積雪などが観測されます。ここで観測されたデータは、天気予報などで公表されます。地震計は、地下の地震計室に設置され、二重扉や独立基礎など、振動や湿気を避けるための工夫が施されています。

かつて玄関ホールにあった阿部式時計は、現在は動いていませんが、竣工当時には塔屋の時計と連動していました。また、屋上は雲の形状などを観測する重要な場所でした。

生物季節観測に用いる桜（ソメイヨシノ）の標本木は、2014年に元町公園内の老木から、気象台敷地内の若い桜の木に交代しました。この桜の開花状況が、横浜の「開花宣言」や「満開」の基準となります。

管内の観測網

神奈川県内には、10か所のアメダス、9か所の震度観測点、2か所の津波観測点、5か所の地殻ひずみ観測点、箱根町内には6か所の火山観測点が設置されています。これらの観測網により、神奈川県内の気象や地震、火山活動を監視しています。

アメダス設置場所は、三浦、辻堂、海老名、小田原など10か所。
震度観測点は、横浜市中区山手町、川崎市中原区小杉御殿町、横須賀市光の丘など9か所。
津波観測点は、三浦市三崎漁港、小田原の2か所。
地殻ひずみ観測点は、横浜川和、横須賀馬堀など5か所。


これらの情報から、横浜地方気象台は、歴史的建造物としての価値と、気象観測という重要な役割を担っていることが分かります。

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