橘嘉智子

橘 嘉智子（たちばな の かちこ）

橘嘉智子は、786年（延暦5年）に生まれ、850年6月17日（嘉祥3年5月4日）に亡くなった日本の女性で、嵯峨天皇の皇后として知られています。彼女は橘奈良麻呂の孫であり、橘清友の娘で、母方は田口氏に属しています。兄弟には右大臣の橘氏公がいます。

経歴

嵯峨天皇が親王であった時に仕え、809年に正式に天皇の妻となり、正四位下に叙されたことから彼女の地位が始まります。810年には従三位に昇進し、815年にはついに皇后に立てられました。その立后の際、高津内親王が妃として廃された後の特殊な状況から、彼女の子である正良親王（後の仁明[[天皇]]）だけが皇位継承権を持つことになりました。立后の宣命には、過去に臣下から皇后となった藤原光明子の例が参考にされています。

嵯峨天皇との間には仁明[[天皇]]（正良親王）、正子内親王（淳和天皇の皇后）、そして他にも2男5女をもうけました。823年、嵯峨天皇から淳和天皇への譲位に伴い、彼女は皇太后となり、833年には仁明[[天皇]]の即位により太[[皇太后]]に昇格しました。850年には出家し、同年に崩御。享年は65歳でした。

彼女は、桓武天皇の皇女である高津内親王が妃として廃され、高位の女性との間を取り持った藤原冬嗣の後押しを受けて立后したとされています。橘氏出身の女性として、皇后に上り詰めたのは彼女が初めてであり、また最後でもあります。

檀林皇后

仏教に対する深い信仰心を持っていた嘉智子は、嵯峨野に日本で初めての禅院である檀林寺を創建しました。このような経緯から「檀林皇后」と呼ばれるようになりました。天皇譲位後も、彼女は冷然院・嵯峨院に住み続け、太[[皇太后]]として朝廷内で一定の影響力を保ちました。特に、橘氏の子弟たちのために大学別曹学館院を設立するなど、彼女の存在は大きなものとなっていきました。仁明[[天皇]]の地位を安定させるために多方面で力を尽くし、承和の変にも深く関わったとされています。

その一方で、彼女に対する恨みも生まれ、正子内親王は彼女を深く恨んだと伝えられています。また、嘉智子の従弟である橘逸勢が謀反の首謀者として目され、その結果、嘉智子の身内が処分される事例も発生しましたが、最終的には仁明[[天皇]]の子孫に皇統が一本化される形となりました。

逸話

嘉智子は仏教への献身から、自らの体を生き物たちに餌として提供することを決意したとされており、さらに「諸行無常」の思想を体現するため、自身の死後、遺体を墓に埋葬することなく路傍に置くよう遺言したと伝わっています。このように、彼女は死に至る過程においても人々に教訓を与えようとしました。その遺体の変化の様子を絵師に描かせたという伝説も残っています。

また、唐の禅僧・義空を招いて檀林寺で禅の講和を行わせましたが、彼は日本における禅への関心の低さに失望し、数年内に唐へ戻ってしまったとのことです。

文学への影響

橘嘉智子を題材にした作品も存在し、杉本苑子の小説『檀林皇后私譜』がその一例です。このように、彼女の人生は多くの人々に影響を与え、語り継がれています。彼女の信仰心、政治的手腕、そして人間関係の複雑さは、歴史を理解する上で重要な要素を成しています。

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