橘家圓太郎

橘家圓太郎 - 江戸・東京を彩る落語の名跡

橘家圓太郎は、江戸時代から続く由緒ある落語の名跡です。現在活躍されているのは八代目にあたりますが、その歴史は初代から数々の個性豊かな落語家たちによって紡がれてきました。本稿では、歴代橘家圓太郎の生涯と芸について、詳細に見ていきます。

初代 橘家圓太郎

初代は、本名出淵長蔵。伊予国河野氏の一族とされる家系に生まれたものの、複雑な事情から葛飾新宿村で農民として暮らすことになります。放蕩な生活を送った後、天保の初め頃に芸人の道へ。二代目三遊亭圓生に入門し、音曲師として「圓太郎」を名乗りました。芝居咄を経て音曲咄へと転向しますが、晩年には初代三遊亭圓橘を名乗ったという説もあります。背中にらくだの刺青があったことから「らくだ」と呼ばれ、文久時代からは俳諧も嗜みました。放浪の生涯を送った初代は、享年不明です。興味深いことに、実子は弟弟子にあたる三遊亭圓朝でした。

四代目 橘家圓太郎

四代目は、本名石井菊松。浅草駒形の生まれで、三遊亭圓朝の弟子として前座名「萬朝」で入門しました。二ツ目昇進後、「三遊亭圓好」を名乗り、真打昇進と共に四代目橘家圓太郎を襲名します。当初は人気がありませんでしたが、初代三遊亭萬橘の「へらへら」という芸をヒントに、ガタ馬車の御者が吹くラッパを吹きながら高座に上がるという独自のスタイルを確立。「ラッパの圓太郎」と呼ばれ人気を博しました。「へらへらの萬橘」、「ステテコの圓遊」、「釜掘りの談志」と共に「珍芸四天王」の一角を担いました。この芸風から、乗合馬車は「圓太郎馬車」と呼ばれるようになりました。関東大震災後の市営バスも、ガタ馬車のような状態だったことから「圓太郎バス」と呼ばれたという逸話も残っています。

五代目 橘家圓太郎

五代目は、本名斎藤徳次郎。神田鍛冶町生まれで、風呂屋の子として育ちました。若くして骨董屋に奉公に出ますが、新内や端唄の稽古に通い、天狗連にも参加。三遊亭圓雀に入門後、様々な名跡を経て、四代目三遊亭圓生門下に移り、「橘家圓三」に改名。その後、「四代目橘家小圓太」を襲名し、京都で活躍しました。1902年に五代目橘家圓太郎を襲名、寄席経営にも手腕を発揮し「実業家圓太郎」と呼ばれるほど成功を収めました。晩年は神戸で料亭を営んでいましたが、必要に迫られて噺家に復帰。音曲噺を得意とし、多くのSPレコードを残しています。

六代目 橘家圓太郎

六代目は、本名鈴木定太郎。東京生まれで、神田の天狗連で「万年家亀三郎」として活動した後、初代三遊亭遊三に入門、「三遊亭三玉」を名乗ります。「小遊三」「公園」と改名を経て、1917年に六代目橘家圓太郎を襲名。小遊三、公園時代には人気を博し、音曲噺のSPレコードも残していますが、圓太郎襲名後は人気が低迷し、昭和初期に引退しました。没年は不明です。

七代目 橘家圓太郎

七代目は、本名有馬寅之助。区役所職員や証券会社社員などを経て、1925年に初代橘ノ圓に入門、「橘ノ百圓」と名乗ります。師匠の死後、五代目蝶花楼馬楽門下に移籍し、1943年に七代目橘家圓太郎を襲名。八代目桂文楽一門に所属した時期もありましたが、その後元の門に戻りました。自作の新作[[落語]]も多く残し、音曲も得意としていました。戦前から八王子に住んでいたことから「八王子の圓太郎」と呼ばれていました。

八代目 橘家圓太郎

八代目は、本名鵜野英一郎。福岡県福岡市出身で、1982年に春風亭小朝に入門。「あさり」として前座を務めた後、二ツ目、そして1997年に八代目橘家圓太郎を襲名しました。国立演芸場花形演芸大賞や文化庁芸術祭新人賞を受賞するなど、当代随一の活躍を見せています。福岡県立筑紫丘高等学校ラグビー部出身で、トライアスロン愛好家としても知られています。

まとめ

初代から八代目まで、それぞれの時代に合わせた芸風で活躍してきた橘家圓太郎。その系譜は、落語史における重要な一端を担っています。それぞれの個性と時代背景を踏まえることで、より深く落語の世界を楽しむことができるでしょう。

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