橘荘

橘荘（たちばなのしょう）

橘荘は、中世に下総国海上郡に存在した荘園で、現在の千葉県香取郡東庄町付近に相当します。別名として東荘（とうのしょう）とも呼ばれています。

概要

橘荘の歴史は、平安時代末期の12世紀にまで遡ります。当初、この地は平常胤の私領であり、相馬郷とともに千葉常胤に受け継がれました。しかし、保延2年（1136年）に下総守であった藤原親通が、公田官物の未納を理由に常重を拘束し、両郷を強引に奪い取るという事件が起こりました。この事件後、橘荘は親通の二男である親盛に譲渡されます。

この横暴な行為に、平常澄が御厨支配を主張し、更に源義朝が常重に圧力をかけ橘荘を奪い、天養2年（1145年）には伊勢内宮に寄進するという、複雑な経緯をたどります。常胤はその後、未納の官物を国庫に納め、相馬郡司に任じられましたが、橘荘は返還されませんでした。

治承4年（1180年）、石橋山の戦いで敗れた源頼朝が房総に逃れた際、常胤の六男である胤頼の進言により、藤原親通の孫である親政を討ち取ったことが契機となり、頼朝は勢力を拡大します。この出来事は、上総広常が頼朝に参陣するきっかけとなり、治承・寿永の乱を制する大きな転換点となりました。

その後、橘荘は胤頼に譲られ、鎌倉時代を通じて東氏に相伝されました。

『吾妻鏡』文治2年（1186年）3月12日条には、橘荘が木内荘とともに二位大納言領であったと記録されています。藤原親通の孫である親政が皇嘉門院判官代であったことから、この二位大納言は皇嘉門院（藤原聖子）の猶子である九条兼実の弟、藤原兼房と推定されています。

また、建久8年（1197年）の香取神宮の遷宮に際しては、橘荘が作料として100石を負担しています。これは、荘園が地域社会において重要な役割を果たしていたことを示しています。

まとめ

橘荘は、平安時代末期から鎌倉時代にかけて、所有者が幾度も変わり、複雑な経緯を辿った荘園です。源頼朝の挙兵や、香取神宮の遷宮など、歴史の重要な出来事にも関わり、その歴史の中で、東氏の支配下で安定した統治が行われました。

参考文献

小笠原長和 監 『千葉県の地名（日本歴史地名大系 12）』 平凡社、1996年、ISBN 4-582-49012-3、554頁

関連項目

日本の荘園の一覧

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