檜前舎人建麻呂

檜前舎人建麻呂について

檜前舎人建麻呂（ひのくまのとねり の たけまろ）は、生没年不詳の奈良時代の人物です。上総国（現在の上千葉県北部）の海上郡を拠点とし、当初は「直」の姓を名乗っていましたが、後に「上総宿禰」に改めました。官位は外従五位下、役職としては隼人正を務めています。

出自

檜前舎人部は、宣化天皇の名代として設けられた部民であり、天皇の宮である「檜前廬入野宮」に由来するとされています。この舎人部は、天皇の宮廷に奉仕する人々で構成され、遠江国や信濃国といった東国に多く見られました。この点において、金刺舎人や他田舎人といった他の舎人部と同様の特徴を持っています。

興味深いことに、『続日本後紀』には、武蔵国加美郡（現在の埼玉県北部）出身の檜前舎人直由加麻呂とその家族が、平安京に移住した記録が残されています。由加麻呂は土師氏の出身であったとされ、檜前舎人部が多様な出自の人々によって構成されていたことを示唆しています。

経歴

檜前舎人建麻呂は、藤原仲麻呂の乱において功績を挙げたと考えられています。その功績が認められ、称徳天皇の時代である天平神護元年（765年）正月には、同じく正六位上であった葛井道依と共に外従五位下に叙せられました。この昇進は、彼が朝廷において一定の地位を確立したことを示しています。

その後、神護景雲元年（767年）9月には、「上総宿禰」の氏姓を賜っています。これは、彼の出自である檜前舎人部が上総国と深い関係を持っていたことを示唆しているのかもしれません。

さらに、光仁天皇の時代の宝亀6年（775年）3月には、隼人正に任じられましたが、わずか一ヶ月後の4月には大隅三行と交代しています。この短期間での交代の理由は不明ですが、彼のキャリアにおける一つの転換点であったと言えるでしょう。

官歴

以下に、檜前舎人建麻呂の官歴をまとめます（『続日本紀』に基づく）。

時期不詳：正六位上
天平神護元年（765年）正月7日：外従五位下
神護景雲元年（767年）9月22日：檜前舎人直から上総宿禰に改姓
宝亀6年（775年）3月2日：隼人正
宝亀6年（775年）4月8日：散位

まとめ

檜前舎人建麻呂は、奈良時代に上総国を拠点として活躍した人物です。藤原仲麻呂の乱での功績や、隼人正への任命と短期間での交代など、その生涯は興味深い出来事に彩られています。彼の出自である檜前舎人部は、東国に多く見られる舎人部の一つであり、当時の社会構造を理解する上で重要な手がかりとなります。また、彼の氏姓の変遷は、古代日本の氏族制度の複雑さを示しています。

参考文献

『続日本紀』4 新日本古典文学大系15 岩波書店、1995年
宇治谷孟訳『続日本紀 （中）・（下）』講談社学術文庫、1992年・1995年
森田悌：訳『続日本後紀』（上）、講談社学術文庫、2010年
『日本古代人名辞典』5 - 1454頁、竹内理三・山田英雄・平野邦雄編、吉川弘文館、1966年
『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編385 - 386頁、雄山閣、2015年

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