檜前舎人部諸国

檜前舎人部諸国（ひのくまのとねりべ の もろくに）

概要

檜前舎人部諸国は、奈良時代に遠江国城飼郡（現在の静岡県西部）の主帳を務めた人物です。生没年は不明ですが、少初位上という位階を有していました。彼は、困窮した人々を救済したことで歴史に名を残しています。

出自

檜前舎人部氏は、古代の伴造氏族の一つであり、宣化天皇の名代である檜前舎人部を統率していました。『新撰姓氏録』によると、その祖先は尾張宿禰の祖である火明命の十四世の孫にあたる波利那乃連公であるとされています。檜前舎人部は、天武天皇12年（683年）に造から連姓に改姓しています。このことから、檜前舎人部諸国は、由緒ある氏族の出身であることが伺えます。

記録

檜前舎人部諸国の名は、『続日本紀』に記録されています。光仁天皇の宝亀2年（771年）3月、彼は私財を投じて20人以上の飢民を救済したとして、同じ遠江国の主帳4人と共に、爵二級を賜りました。これは、淳仁天皇の天平宝字8年（764年）の勅令によるもので、正六位上未満の位階を持つ者が、一年以内に20人以上の飢民を救済した場合、位一階、50人以上の場合は位二階を進めるとされていた措置に基づいています。

この記録から、檜前舎人部諸国は、単なる地方官吏ではなく、私財をなげうってまで民を救おうとする強い責任感と慈悲心を持った人物であったと考えられます。当時の社会では、飢饉や災害が頻繁に発生しており、人々の生活は非常に不安定でした。そのような状況下で、檜前舎人部諸国のような人物の存在は、多くの人々にとって希望の光であったことでしょう。

関連人物・事項

檜前部老刀自：檜前舎人部の一族。
檜前舎人建麻呂：檜前舎人部の一族。

参考文献

『続日本紀』4 新日本古典文学大系15 岩波書店、1995年
宇治谷孟訳『続日本紀 （中）・（下）』講談社学術文庫、1992年・1995年
* 『日本古代人名辞典』5 - p1454、竹内理三・山田英雄・平野邦雄編、吉川弘文館、1966年


この文章は、檜前舎人部諸国の生涯と功績について、現存する史料に基づき、詳細に解説したものです。彼の行動は、当時の社会における地方官吏の役割や、民衆救済の重要性を示す貴重な事例と言えるでしょう。

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