檜前部老刀自

檜前部老刀自（ひのくまべ の おいとじ）について

檜前部老刀自（生没年不詳）は、奈良時代に活躍した女官です。檜前とも表記されるこの人物は、上野国佐位郡（現在の群馬県佐波郡あたり）出身の采女（うねめ）でした。

出自

檜前部氏は、宣化天皇の名代である部民に由来し、東漢氏とは異なる系譜を持つと考えられています。『続日本紀』には、宝亀2年（771年）に遠江国城飼郡の人々が檜前舎人部諸国として登場します。また、正倉院に残る天平感宝元年（749年）の調庸布の墨書銘には、「佐位郡大領」として「梔前部君賀味麻呂」という人物の名が見え、彼が老刀自の縁者である可能性が指摘されています。

経歴

檜前部老刀自は、正倉院文書に登場する佐味命婦と同一人物であるという説があります。この説に基づくと、彼女は天平19年（748年）に東大寺写経所に対し、自らの宣によって方軌4巻を内裏へ請い入れさせました。さらに、翌年には陀羅尼集経1部12巻を、天平勝宝3年（751年）には法花玄賛第一巻を書写させています。これらの活動から、彼女が写経事業に深く関わっていたことが伺えます。

称徳天皇の時代になると、天平神護2年（766年）に昇叙され、翌年には上野佐位朝臣の姓を賜りました。さらにその翌年には、上野国の国造に任命され、その際、掌膳（かしわで）という役職も兼任しました。光仁天皇の時代である宝亀2年（771年）には、従五位下に叙せられます。しかし、それ以降の記録は残されていません。

官歴

『続日本紀』に記された彼女の官歴は以下の通りです。

時期不詳：外従五位下
天平神護2年（766年）12月4日：外従五位上
時期不詳：君姓を賜る
時期不詳：掌膳（かしわで）に任じられる
天平神護3年（767年）3月6日：上野佐位朝臣の姓を賜る
神護景雲2年（768年）6月：上野国造に任命される
宝亀2年（771年）正月2日：従五位下に叙せられる

脚注

檜前部老刀自は、采女として宮中に仕えながら、写経事業にも携わった女官でした。
彼女の出自である檜前部は、宣化天皇の名代の部であり、東漢氏とは異なる系統です。
佐味命婦と同一人物である可能性が指摘されており、写経に関する活動が記録に残っています。
上野国造に任命されるなど、地方行政にも関与しました。

参考文献

『続日本紀』4 新日本古典文学大系15 岩波書店、1995年
『続日本紀』5 新日本古典文学大系16 岩波書店、1998年
宇治谷孟訳『続日本紀 （中）・（下）』講談社学術文庫、1992年・1995年
『日本古代人名辞典』3 - p828、竹内理三・山田英雄・平野邦雄編、吉川弘文館、1961年
『日本古代人名辞典』5 - p1452・1455、竹内理三・山田英雄・平野邦雄編、吉川弘文館、1966年
『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編387 - 388頁、雄山閣、2015年

関連項目

采女

以上が、檜前部老刀自に関する詳細な情報です。

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