正伝寺 (岐阜県八百津町)

正傳寺

正傳寺は、岐阜県加茂郡八百津町にある臨済宗妙心寺派の寺院です。山号は法雲山です。この寺は、その歴史の中で数々の変遷を経てきました。

歴史

開基と初期

正傳寺の始まりは、暦応2年（1339年）に夢窓疎石によって開基された法雲山 米山寺に遡ります。当時の米山寺は現在地より330メートルほど東に位置し、七堂伽藍が完備され、足利尊氏から守衛の地として認められたと伝えられています。しかし、その後のしばらくの歴史については、資料が乏しく、詳細な記録は残されていません。

妙心寺派への改宗

明応2年（1493年）、この地出身の東陽英朝（大道眞源禅師）が妙心寺十三世として住持となり、寺の宗派を妙心寺派に改めました。これにより、正傳寺は臨済宗妙心寺派の寺院としての新たな歩みを始めることとなります。

土岐氏の祈願所

永正元年（1504年）、土岐政房によって土岐氏の祈願所と定められ、寺領73石余と境内30石の朱印状を得ましたが、その後寺運は一時的に衰退しました。

織田信長の保護

天正8年（1580年）には、美濃を支配していた織田信長から保護を受け、寺の存続が図られました。これにより、正傳寺は再び安定した時期を迎えることとなります。

稲葉氏の菩提寺へ

天正18年（1590年）、稲葉方通が和知城主となると、正傳寺は稲葉氏の菩提寺となりました。この頃から寺は、稲葉氏との深い関わりを持つようになります。

現在地への移転と寺号の変更

慶長5年（1600年）、稲葉方通が父である稲葉一鉄の十三回忌法要を行うにあたり、寺基を現在地に移し、大仙寺六世の惟天景縦を招いて開山とし、寺号を正傳寺と改めました。この移転により、寺は新たな場所で再出発することとなります。

寺領の寄進

慶長9年（1604年）8月には、稲葉方通が父一鉄の十七回忌法要に際し、寺領30石、境内・大門道通・山林56町歩を寄進しました。これにより、寺の経済基盤が確立されました。

中興の祖

その後、寺は無住となりますが、元和3年（1617年）に愚堂東寔（大圓寶鑑國師）を招き中興の祖とし、寺運の隆興に尽力しました。愚堂東寔は、正傳寺の復興に大きく貢献しました。

尾張藩の庇護

稲葉氏が嗣子なく断絶すると、尾張藩の庇護を受けるようになりました。これにより、寺は安定した運営を維持することができました。

天然記念物の椿

境内には、八百津町の天然記念物に指定されている椿の樹があり、訪れる人々の目を楽しませています。

寺宝

正傳寺には、多くの貴重な寺宝が所蔵されています。以下はその一部です。

岐阜県指定文化財

木造十一面観音坐像
金銅製三具足
愚堂東寔禅師の墨書5幅

八百津町指定文化財

白隠慧鶴禅師の墨跡6幅
山岡鉄舟の書幔幕1枚
織田信長書状
土岐美濃守政房の墨書
雄禅宗虎禅師の墨書
雪江宗深禅師の墨書
以安智察禅師の墨書
惟天景縦禅師の墨書


これらの寺宝は、正傳寺の歴史と文化を物語る貴重な資料となっています。

参考文献

『八百津町史　通史編』　第九章 近世の宗教と文化　第二節 宗教・寺院　正伝寺　p212　八百津町史編纂委員会　1976年
* 『美濃国加茂郡誌』　第七章　宗教　第二節　寺院　【和知正傳寺】　p781～p782　岐阜県加茂郡役所　大正10年

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