正宗寺 (瑞浪市)

恵照山 正宗寺

正宗寺は、岐阜県瑞浪市北小田町に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。龍泉派に属し、恵照山を山号としています。この寺院は、その長い歴史の中で、地域の人々の信仰と文化を支え続けてきました。

歴史

正宗寺の起源は、永享年間に中野庵として草創されたと伝えられています。中野庵は、曾勘、五蔵主、庄蔵主、彌蔵主、礼蔵主、普蔵主、鐡蔵主、善蔵主、圓蔵主といった庵主たちによって守られてきました。

天正3年（1575年）、京都東福寺の了室西悟が中野庵に滞在した際、三河に三玄寺を開山した柏庭宗松の意志を受け、天正8年（1580年）に寺号を正宗寺と改めました。その後、寛文7年（1667年）には、可児郡久々利村の東禅寺の法系である雲海祖端が、正宗法憧（三河三玄寺の柏庭宗松）を勧請開山として、龍泉門派の寺院として再興しました。しかし、天明6年（1768年）に火災で焼失し、寛政年間に再建、さらに寛文年間に再々建されました。

山門の左手には、元禄6年（1693年）の地蔵と文政12年（1829年）の三十三観音が並び、本堂の前には唐金の穏やかな表情の観音像が安置されています。

寺宝

正宗寺には、歴史的価値の高い寺宝がいくつか所蔵されています。

御深井釉角香炉

御深井釉角香炉は、高さ17.5センチメートル、口径31.4センチメートル×25.7センチメートルの大型の香炉です。全体に御深井釉が施され、紐で繋がれた馬の像が正面と背面に貼られています。馬の体部は竹管文で装飾されており、江戸時代中期における陶工の技術の高さを示す逸品です。香炉の底部には「元禄拾丁丑皐月吉日　籠橋氏信重寄進之　水野四郎兵衛　濃州土岐郡駄智村　作」という文字が刻まれており、元禄10年（1697年）に土岐郡駄智村（現在の土岐市駄知町）の水野四郎兵衛によって制作され、庄屋の籠橋信重によって寄進されたことがわかります。

この香炉は、かつて旧正月に高松観音堂（瑞浪市小田町）の祭事で公開されていました。

魚藍観音図

黄檗宗五世の高泉性潡の筆による魚藍観音図も所蔵しています。この絵は、宗教的な価値だけでなく、美術的価値も高いと評価されています。

関連寺院

正宗寺は、以下の寺院とも深い関わりがあります。

薬王山 東仙寺

瑞浪市戸狩に位置する東仙寺は、臨済宗妙心寺派の寺院で、美濃瑞浪三十三観音霊場の二十八番札所です。本尊は薬師如来。寛永3年（1626年）に東仙庵として開創され、その後、正宗寺の系下となりました。貞享3年（1686年）に正宗寺の雲海祖端により再興され、文久元年（1861年）には正宗寺の礼宗祖仁によって東仙寺として中興されました。現在は、正宗寺の住持が兼務し管理しています。

高松山 観音堂

瑞浪市西小田町にある観音堂は、美濃瑞浪三十三観音霊場の二十四番札所です。本尊は行基が刻んだと伝わる馬頭観世音菩薩です。元は高松山慈雲寺でしたが、廃寺となり、その後、正宗寺が管理しています。33年ごとに開帳が行われています。東の桜堂薬師に対し、西の高松観音として知られています。かつては、軍馬や農耕馬を連れて参詣する人々で賑わい、麓には馬場があり、祭りの日には競馬も行われていたそうです。昭和53年（1978年）に修復され、中には歴史のある絵馬が保管されています。また、軍馬慰霊碑や日清戦争・日露戦争における戦没者の慰霊碑なども建立されています。

関連リンク

正宗寺　瑞浪市観光協会
観音堂　瑞浪市観光協会
東仙寺　瑞浪市観光協会
正宗寺の御深井釉角香炉（しょうじゅうじのおふけゆうかくこうろ）瑞浪市役所

参考文献

『瑞浪市史　歴史編』　第六編　近世　第五章　文化と信仰(文化宗教史)　第二節　神社と信仰　ニ　市内の近世寺院　市内の各寺院　p1027　瑞浪市　昭和49年(1974年)
『ふるさとの歴史 : 郷土学習のための各町概史 (瑞浪市郷土史シリーズ ; その1)』　瑞浪地区 寺河戸 小田 山田 町概史　二　小田村　近世　小田村　p35　渡辺俊典　瑞浪市郷土史研究会　1983年

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