段民

段民（だん みん）は、明代に活躍した官僚であり、その生涯は激動の時代と密接に結びついています。1376年に常州武進県で生まれ、字を時挙と称しました。彼は、段志清と葉氏の間に生まれた子として、この世に生を受けました。

1404年、段民は進士の試験に合格し、その才能を認められて翰林院庶吉士に任じられました。この職務において、彼は章敞や吾紳といった同僚とともに、文淵閣に入り、『永楽大典』の編纂という国家的な事業に携わることとなりました。しかし、母親の死去に伴い、職を辞して喪に服すという道を選びます。喪が明けた後、彼は刑部山東清吏司主事として再び官界に復帰し、その才能を発揮し始めます。その後、南京に召還され、承直郎に任命されました。

永楽帝に扈従して北京に赴いた段民は、『四書大全』、『五経大全』、『性理大全』といった重要な書籍の編纂事業にも参加しました。この間、彼は着実にキャリアを積み重ね、刑部郎中にまで昇進します。

1420年、山東で唐賽児の乱が発生した際、事態は急転します。反乱軍によって三司の官が全員殺害されるという非常事態の中、段民は山東左参政という要職に抜擢され、反乱鎮圧の最前線に立つことになりました。唐賽児が官軍の包囲を脱出し行方不明となった後、彼女の捜索のために、山東や北京の尼、そして全国の出家した婦女が多数逮捕され、その数は数万人に及んだと伝えられています。この混乱の中、段民は民衆の心をなだめ、事態の収束に尽力しました。

永楽帝が漠北に遠征した際には、食糧輸送の大役を担いました。段民は、済寧から潞河までの食糧輸送を綿密に計画し、陸揚げされた物資は居庸関を越えて塞外へと運ばれました。彼の周到な準備と実行力により、輸送は滞りなく行われ、民衆を騒がせることもありませんでした。北京に戻った後、段民は巡按御史とともに、各地の官吏の考課を記録し、朝廷に報告するよう命じられました。

1428年、段民は北京に召還され、南京戸部右侍郎の代行を命じられました。翌年には正式に南京戸部右侍郎に任命され、1430年には南京刑部右侍郎に転じました。当時、南京の二つの部門は管理が行き届いていないことで知られていましたが、段民が着任すると、綱紀が粛正され、長年の弊害が取り除かれました。上元県で甥に殴打された人物が、怒りのあまり通政司に訴え出た事件では、従来の慣習が抱える矛盾点を指摘しました。通常、このような罪は米を納めることで贖われるのですが、越訴は厳禁されており、違反者は遼東に兵士として流されることになっていました。段民は、「目下の者の罪が贖われる一方で、目上の者が遠方に追放されるのは理にかなわない」と主張し、その例を改めるよう進言しました。宣徳帝はこの意見を認め、慣習が改められました。

宣徳帝は、段民の清廉さと節操の堅さ、そして端正で謹直な人柄を高く評価し、南京の百官の考査を特別に段民に命じました。1433年、宣徳帝は十悪以外の囚人の罪一等を減じるという大赦の詔を発しましたが、段民は重い罪を犯した囚人に対しても同様に罪を軽減しました。しかし、後に皇帝の意向が変わり、彼らを赦免の対象としないこととなりました。釈放された囚人を連れ戻すことになったものの、すでに数人が逃亡しており、段民がこの状況を報告すると、給事中の年富らが段民を弾劾しました。しかし、宣徳帝は段民の賢明さを理解しており、この件を不問としました。

1434年2月29日、段民は在官のまま59歳でその生涯を閉じました。彼の死後、襄介という諡号が贈られました。段民の生涯は、『明史』巻158 列伝第46に詳しく記されており、また、楊士奇の『東里続集』や王直の『抑庵文後集』にも、彼の業績を称える文章が収録されています。これらの記録は、段民がいかに優れた官僚であり、その功績が後世にまで語り継がれているかを物語っています。

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