章敞

章敞（しょう しょう）

章敞は、明代に活躍した官僚であり、その生涯は学問と公正な職務遂行に彩られています。字を尚文、号を質庵と称し、紹興府会稽県を本貫としました。1376年11月14日に章昇の子として生まれ、1437年12月4日に62歳でその生涯を閉じました。

初期のキャリアと学術への貢献

1404年、章敞は進士の試験に合格し、翰林院庶吉士に任じられました。ここで、彼は段民や吾紳といった同僚と共に、文淵閣に入り、『永楽大典』の編纂という国家的な事業に携わることになります。この編纂事業への参加は、彼の学識の高さを示すとともに、その後の官僚としてのキャリアを築く上で重要な経験となりました。

1412年冬には、刑部主事に任命され、実務官僚としてのキャリアをスタートさせます。翌1413年には、『四書大全』、『五経大全』、『性理大全』といった重要文献の編纂にも参加し、その学術的な才能を遺憾なく発揮しました。

刑部での活躍

章敞の公正で鋭い観察眼は、刑部での職務遂行においても際立っていました。ある時、京師に近い西山で盗賊が摘発され、数百人が逮捕されるという事件が起こりました。しかし、章敞は事件の背景に冤罪があることを見抜き、言葉遣いが異なる一人を留め、残りの人々を釈放しました。その後の尋問で、留めた者が真犯人であることが判明し、章敞の判断が正しかったことが証明されました。この出来事は、彼の優れた洞察力と公正な判断力を物語るエピソードとして知られています。

1416年、章敞は刑部員外郎に進み、奉議大夫の位を授けられます。その後、刑部郎中に昇進しましたが、父の死去に伴い辞職し喪に服しました。喪が明けると官界に復帰し、吏部考功郎中へと転じます。1425年には、母の死去により再び辞職し喪に服しますが、宣徳初年に官界に復帰し、吏部験封郎中に任じられました。

礼部での昇進とベトナムへの使節

1431年、章敞は行在礼部右侍郎に抜擢され、嘉議大夫の位に進みます。この時、彼は徐琦と共にベトナムへの使節として派遣され、黎利に権国事の命を伝えるという重要な任務を担いました。黎利は当初、使節を軽んじる態度を示しましたが、章敞は毅然とした態度で彼を叱責し、勅命を厳粛に受けさせました。帰国する際、黎利は手厚い贈物を贈ろうとしましたが、章敞はこれを一切受け取りませんでした。この態度は、彼の清廉潔白な人となりを示すものであり、後の人々にも賞賛されました。

1434年、黎利が死去し、子の黎麟が後を継いだ際にも、章敞は再びベトナムへの使節として派遣されました。この時も、贈物を一切受け取らなかったという記録が残っています。その後、1435年に章敞は礼部左侍郎に昇進し、そのキャリアの頂点を極めます。しかし、1437年12月4日、62歳でこの世を去りました。

死後と遺産

章敞は生前、『質庵稿』1巻を著しました。また、息子である章瑾もまた官僚として成功し、礼部侍郎にまで昇りつめています。章敞の生涯は、学問への情熱、職務に対する公正さ、そして清廉潔白な人柄によって特徴づけられます。彼の業績は、明代の歴史に名を残すだけでなく、後の世代にも大きな影響を与え続けています。

章敞の墓碑銘は、楊栄の著書である『文敏集』に収録されており、彼の功績を今日に伝えています。

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