毛利安子

毛利安子：幕末の長州藩を支えた女性

毛利安子（もうり やすこ）は、天保14年（1843年）に長府藩主・毛利元運の娘として生まれました。幼名は銀姫。嘉永4年（1851年）に宗家当主・毛利慶親の養女となり、安政5年（1858年）には徳山藩主・毛利広鎮の十男である定広（後の毛利元徳）と結婚しました。夫婦揃って養子という、少し変わった形での婚姻でした。

激動の時代

文久2年（1862年）、幕府が参勤交代の禁を緩和したことを受け、安子は江戸を離れて萩へと移り住みました。文久3年（1863年）の下関戦争では、率先して家内を鼓舞したと伝えられています。元治元年（1864年）の禁門の変後、長州藩は朝敵となり、幕府からの長州征伐を受けます。そのような状況下の元治2年（1865年）に、安子は長男・興丸（後の毛利元昭）を出産。結婚から8年目にして授かった男の子を、自ら入浴させるなどして大切に育てました。

慶応3年（1867年）には、倒幕の密勅により長州藩は朝廷側に転じ、毛利敬親と毛利広封（元徳）の官位も回復しました。夫や養父が京や江戸へ赴き国許を空けることが多かったため、安子が国許に届けられる情報に率先して対応したといいます。明治2年（1869年）に元徳が長州藩主となると、安子は藩主の正室として多忙な日々を送りました。

明治以降の活動

明治維新後、華族となった安子は東京へ移住し、婦人教育や慈善活動に力を注ぎました。明治23年（1890年）からは大日本婦人教育協会の会長を務め、日本赤十字社の要職も担うなど、社会貢献に尽力しました。大正11年（1922年）には勲四等に叙勲されています。

大正14年（1925年）、安子は82歳でその生涯を閉じました。激動の幕末から明治、大正と時代を駆け抜け、長州藩、そして日本の発展に貢献した女性として、その名は歴史に刻まれています。

血筋と栄典

安子の高祖父である毛利重就は、安子の養父母である敬親と都美子とも共通の先祖にあたります。そのため、夫の元徳よりも養父母との血縁が近いという珍しい関係でした。

栄典
1922年（大正11年）12月22日 - 藍綬褒章
1925年（大正14年）7月25日 - 勲三等宝冠章

登場作品

花燃ゆ（NHK大河ドラマ、2015年、演：田中麗奈）

参考文献

『カメラが撮らえた幕末三〇〇藩 藩主とお姫様』新人物往来社、2012年、136-141頁。ISBN 9784404042149。
『日本女性人名辞典』日本図書センター、1993年。ISBN 4820571281。

関連項目

乃木希次 - 守役、安子の母欽子に仕えた土浦藩士の娘を後妻とする。

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