民主国民党 (韓国 1949-1955)

民主国民党：韓国における保守政党の歩み

1949年2月、韓国で民主国民党（略称：民国党）が誕生しました。この政党は、当時の韓国政治において重要な役割を果たした保守勢力の1つであり、その歴史は、韓国の民主主義と政治体制の形成過程を理解する上で欠かせません。

結成の背景

民主国民党の結成は、複雑な政治状況の中で行われました。当時、韓国では李承晩大統領率いる自由党が支配的な地位にありました。一方、韓国民主党（韓民党）は親日派とのイメージに苦しんでいました。こうした状況の中、申翼熙氏率いる大韓国民党と池青天氏率いる大同青年団が統合し、新たな保守政党として民主国民党が誕生したのです。この党の結成には、韓民党の親日派イメージを刷新し、同時に李承晩大統領の勢力を牽制するという狙いがありました。

党は、韓民党の構成員や綱領・政策を多く継承し、解放後、最初の保守野党として活動をスタートさせました。民主国民党は、内閣責任制の導入と、そのため憲法改正を強く訴え続けました。しかし、選挙では自由党に敗北を重ねることになります。

党の綱領と政策

民主国民党は、国民の権利擁護、民主政治の確立、自由経済の樹立、民族文化の向上、世界平和の実現などを掲げていました。具体的には、国民の基本的自由と生活の保障、主要産業の国営化または統制、農業経済の振興、工業化政策の推進、勤労者の権利擁護、教育・保険の機会均等、そして国防力の強化などを政策として推進しました。これらの政策は、戦後の韓国社会の課題に対応するものでした。

主要メンバー

民主国民党には、韓国の政治をリードする多くの著名な人物が参加しました。委員長には申翼熙氏が就任し、金度演氏、李栄俊氏らが副委員長を務めました。また、白南薫氏、徐相日氏、趙炳玉氏らが顧問として党を支えました。政策委員会会長には羅容均氏、総務部長には李晶夾氏が就任するなど、党運営の中核を担う人材が揃っていました。

党の終焉と民主党への合流

民主国民党は、1954年11月に行われた憲法改正（いわゆる「四捨五入改憲」）に強く反発しました。この改憲は、李承晩大統領の終身政権を可能にするものとして批判され、民主国民党は、護憲同志会（護同）を中心とした動きと合流し、1955年9月18日に結成された民主党に合流しました。この合流は、保守勢力再編の大きな転換点となりました。

歴史的意義

民主国民党は、短命に終わった政党ではありましたが、韓国の民主主義と政治体制の形成過程において重要な役割を果たしました。韓民党に対抗する保守政党として、そして、李承晩大統領の自由党に対抗する勢力として、民主国民党の存在は、韓国政治の多様性を示すものでした。また、内閣責任制導入や憲法改正といった主張は、後の韓国政治に大きな影響を与えたと考えられます。民主国民党の歴史を振り返ることは、韓国の政治史をより深く理解する上で不可欠と言えます。

参考文献

韓国史事典編纂委員会　金容権編著『朝鮮韓国近現代史事典』（日本評論社）
中央選挙管理委員会編『大韓民國政黨史　第1輯（1945～1972）』

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