気賀勘重

気賀勘重（きが かんじゅう / けが かんじゅう）

生涯

気賀勘重は、1873年（明治6年）3月15日に静岡県浜名郡都盛村（現在の浜松市中央区）の農家に生まれました。幼少期は農業に従事していましたが、後に西遠銀行頭取の気賀敬太郎の婿養子となり、気賀家を継ぎました。1895年（明治28年）に慶應義塾大学文学科を卒業後、同大学の教員となり、1898年（明治31年）には理財科教務主任に就任しました。

1899年（明治32年）には、慶應義塾の第1期ドイツ留学派遣生として選抜され、ゲッティンゲン大学、ライプツィヒ大学、ベルリン大学で経済学を学びました。特に、経済学者のカール・ビュヒャーや財政学者のグスタフ・コーンに師事し、研究に励みました。1903年（明治36年）には、論文「Das Bankwesen Japans（日本の銀行制度）」で博士号を取得して帰国しました。

帰国後は慶應義塾に復帰し、1922年（大正11年）に専門部部長、1926年（大正15年）には経済学部長に就任しました。学外では、社会政策学会の中心メンバーとして活動したほか、1920年（大正9年）にはワシントン国際労働会議に顧問として参加しました。また、第13回衆議院議員総選挙で静岡県郡部区から選出され、立憲政友会に所属し、1期衆議院議員を務めました。その後、文部省に招聘され高等文官試験委員や米価審議会委員などを歴任しました。

気賀勘重は、1944年（昭和19年）11月11日に生涯を閉じました。

業績

気賀勘重は、経済学者として、特にドイツとオーストリアの経済学を日本に導入し、農業問題や農政を重視しました。その研究活動は農学者とも評されるほど、農業経済学の分野で大きな足跡を残しました。また、教育者としても多くの人材を育成し、慶應義塾大学の発展に貢献しました。

経済思想においては、農業問題、農政を最重要視し、当時の社会情勢を考慮した上で、経済学的な視点から問題解決に取り組んでいました。

人物

気賀勘重は、面倒見の良い人物としても知られており、申酉事件で東京高商（現在の一橋大学）を離れ、慶應義塾に移っていた福田徳三などの面倒をよく見ていました。

家族

実父は農家の三輪幸一郎、養父(岳父)は西遠銀行頭取の気賀敬太郎です。

長男の気賀真一郎は千代田生命保険常務、次男の気賀潤二郎は三井信託銀行人事部長、三男の気賀健三は慶大教授として活躍しました。長女の田巻光は、田巻堅太郎の長男である俊太郎と結婚しました。

主な著書

単著
Das Bankwesen Japans, Berger, 1903
『交易論』（宝文館、1910年）
『企業の聯合及合同』（隆文館、1911年）
『工業政策』（時事新報社出版部、1920年）
『農村問題』（岩波書店、1925年）
『農業政策』（丸善、1927年）
『小作問題』（日本評論社、1929年）
『国民経済の進歩：経済原論』（国民工業学院、1932年）
『物価と所得：経済原論続篇』（国民工業学院、1933年）
『経済講話』（国民工業学院、1934年）
『経済学講話』（松華堂、1936年）
共著
Lesebuch für den deutschen Unterricht, zusammengestellt von H. Minami und G. Muko, Doitsugogaku-Zasshisha, 1905
（気賀健三）『世界原始産業論』（春秋社、1933年）
（気賀健三）『世界經濟政策最近の動向』（春秋社、1933年）
翻訳
フィリッポヴイッチ『経済原論』（同文館、1903年・増補版1908年）
フィリッポヴイッチ『経済政策』（同文館、1906-1908年・増補版1910-1912年）
アダム・スミス『國富論』（岩波書店、1926年）
フィッシャー『利子論』（気賀健三との共訳、岩波書店、1935年）

関連項目

気賀健三
協調会

参考文献

気賀勘重 Bibliographical Database of Keio Economists - 人物詳細
* 衆議院・参議院『議会制度百年史 衆議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年。

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