永谷天満宮

永谷天満宮について

神奈川県横浜市港南区上永谷に位置する永谷天満宮は、菅原道真公（すがわらのみちざねこう）を主祭神として祀る由緒ある神社（天満宮）です。旧社格は村社と定められていました。特に、御神体として伝わる木像が「日本三躰天神」の一つとされる点に、大きな歴史的価値と特徴があります。

由緒と歴史

永谷天満宮の歴史は古く、その創建には菅原道真公とその子孫が深く関わっています。江戸時代に編纂された地誌である『新編相模国風土記稿』によると、道真公が太宰府へ左遷される際、その五男にあたる菅秀才こと菅原淳茂（すがわらのあつしげ）に授けられた木像が、神社の始まりと伝えられています。淳茂は後に東国へ移り住み、相模国の永谷郷に居を構え、父である道真公の木像を大切に祀ったのがこの地の天神信仰の源流とされています。

時代が下り、明応2年（1493年）2月、当時の永谷郷の領主であった宅間上杉家の上杉乗国（うえすぎ のりくに）の夢に、この木像が現れたといいます。乗国はこの神秘的な出来事を畏敬し、社殿を建立してこの木像を御神体として安置しました。これが、現在の永谷天満宮が神社として正式に創建された経緯とされています。

その後、永谷天満宮は天正10年（1582年）に宅間上杉家の上杉規富（うえすぎ のりとみ）によって再建されました。この再建と時を同じくして、神社の別当寺院として貞昌院（ていしょういん）も創建されました。貞昌院は、伝承によれば菅原淳茂が居館を構えた跡地にあるとされています。

御神体 - 日本三躰天神

永谷天満宮の最も特筆すべき文化財は、御神体として安置されている菅原道真公の木像です。この木像は、道真公自身が太宰府で自らの姿を鏡に映しながら彫ったものと伝えられており、高さは約1寸8分（約6cm弱）と非常に小さな像です。

道真公が自ら彫ったとされる木像は、この永谷天満宮のものの他に二体があるとされています。一体は道真公の墓所がある太宰府（当初は安楽寺に安置され、後に廃仏毀釈を経て太宰府天満宮へ）、もう一体は道真公の出生地である河内国土師郷（現在の大阪府藤井寺市）の先祖代々の菩提寺であった道明寺（神仏分離を経て道明寺天満宮へ）にそれぞれ安置されています。これら三体の像を合わせて、「日本三躰天神（にほんさんたいてんじん）」と称されており、永谷天満宮はこれらを祀る希少な神社の一つとして知られています。御神体の公開は、後述の式年大祭の際など、極めて限られた機会のみです。

年間の祭事

永谷天満宮では、年間を通じて様々な祭事が行われ、多くの参拝者が訪れます。

1月25日：初天神 - 新年最初の天神様の縁日です。
6月30日：大祓（夏越祓） - 半年の間に身についた穢れを祓い清めます。
9月25日：例大祭 - 年間の最も重要な祭事です。特に、12年に一度の丑年には「式年大祭」として盛大に挙行され、普段は拝することのできない御神体の道真公木像が開帳されます。
12月25日：納天神 - 年内最後の天神様の縁日です。
12月31日：大祓（年越祓） - 一年の最後の日に、来る年に向けて心身を清めます。

これらの祭事は、永谷天満宮の長い歴史と信仰を今に伝えています。

現地情報とアクセス

所在地: 神奈川県横浜市港南区上永谷5-1-5
* 交通: 横浜市営地下鉄ブルーライン上永谷駅から徒歩約5分と、公共交通機関でのアクセスが便利です。自動車の場合、横浜市環状2号線上永谷駅入口交差点付近に位置しています。

周辺には、かつて別当寺であった貞昌院（菅原淳茂の居館跡と伝わる）や、横浜市営地下鉄上永谷車両基地などがあります。また、比較的近い場所に野庭神明社や横浜市立港南図書館なども位置しています。

永谷天満宮は、学業成就や合格祈願にご利益があるとされ、多くの受験生やその家族が参拝に訪れます。また、日本三躰天神を祀る貴重な存在としても、歴史や文化に関心のある人々にとって訪れる価値のある場所です。

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