江万里

江 万里：南宋の儒学者と政治家

江万里（こうばんり、1198年 - 1275年）は、南宋時代の著名な政治家および儒学者です。彼は南康軍都昌県に生まれ、幼少期からその才覚を認められました。彼の字は子遠、号は古心であり、学問だけでなく、政治にも深い関心を抱いていました。

生涯と業績

嘉定15年（1222年）、江万里は臨安にある太学に推挙され、理宗帝の目に留まります。その後、彼は著作郎として知識を深め、次第に各地の知事を歴任することになります。特に彼が吉州の知事を務めていた淳祐元年（1241年）には教育機関を設立し、他の州でも同様の取り組みを展開しました。これは彼の教育に対する強い信念の表れでありました。

一方で、彼はその正直さと強い信念から、時には政治的な困難にも直面します。やがて彼は監察御史に転任しますが、剛直な性格が有力者の反感を買い、官を去らざるを得なくなり、約12年間を隠遁生活に費やしました。

宝祐元年（1253年）、江万里は福建転運使として中央に召還されました。この時、彼は視察中に賈似道に見出され、政権に復帰することになります。景定元年（1260年）には刑部侍郎および戸部尚書に抜擢され、さらには咸淳5年（1269年）には左丞相に昇進、右丞相の賈似道と並ぶ地位に立ちます。江万里は当初、賈似道への恩義を感じ、その政策に従っていました。

しかし、彼はモンゴル帝国の侵略に対する賈似道の無策に対して次第に不満を抱くようになります。文天祥らとともに、モンゴル軍に包囲された襄陽を救うための上奏を行い、賈似道との対立を深めることとなります。

咸淳9年（1273年）、賈似道の策略によって、江万里は左丞相の職務を退けられ、咸淳10年（1274年）には饒州に退きます。しかし、同年、饒州は元軍に包囲される事態が発生し、激しい攻防戦の末に城が陥落します。この際、江万里は自らの責任を感じ、その結果を恥じて近くの池に飛び込み自ら命を絶つという悲劇的な選択をします。

江万里の死後、彼の忠節と誠実さは評価され、南宋軍が饒州を回復した際には、文天祥とともに彼の功績を称える上奏が行われました。これにより、朝廷から益国公・太師の官爵、さらには文忠の諡号を賜りました。江万里の生涯は、政治の厳しさと信念を貫くことの重要性を私たちに教えてくれます。

伝記資料

江万里の詳細な業績や歴史的背景は、歴史書『宋史』の列伝第177巻に記されています。

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