江淵

江淵（こう えん、生没年不詳）は、明代の官僚であり、字を世用と称しました。彼の本貫は重慶府江津県にあります。

生涯

1430年（宣徳5年）、江淵は進士に及第し、翰林院庶吉士となりました。その後、1435年（宣徳10年）には翰林院編修に任じられ、着実に官僚としてのキャリアを積み重ねていきました。1447年（正統12年）には、英宗の命により、杜寧、裴綸、劉儼、商輅、陳文、楊鼎、呂原、劉俊、王玉らと共に、曹鼐らを師として東閣で学問に励みました。この時期、彼は翰林院侍読の職に就いています。

1449年（正統14年）、明王朝を揺るがす大事件、土木の変が勃発します。この混乱の中、郕王朱祁鈺が監国となると、徐有貞らは都を南に移すことを主張しましたが、太監の金英がこれを退けました。その際、宮廷に入ろうとしていた江淵は、徐有貞から南遷の意見が退けられたことを知ります。この状況を受けて、江淵は宮中に入ると、北京を固守する策を力説し、郕王にその才能を認められ、刑部右侍郎に抜擢されました。エセン・ハーンが北京に迫ると、景泰帝（朱祁鈺）の命を受けて都督孫鏜の下で参軍事として、防衛に当たりました。

1450年（景泰元年）、江淵は紫荊関、倒馬関、白羊関などの要所を視察し、都指揮同知の翁信とともに雁門関の修築を監督しました。同年8月には、刑部右侍郎の職務に加え、翰林院学士を兼ね、国政の機密にも参与するようになります。さらに9月には、翰林学士を兼ねたまま戸部右侍郎に転じました。1451年（景泰2年）6月には、天文の異変に際して三事を上奏し、いずれも聞き入れられました。1452年（景泰3年）2月、翰林学士を兼ねたまま、吏部左侍郎に転じました。江淵は景泰2年に免除した田租を追徴すれば、民の信頼を失うと進言し、景泰帝の賛同を得ます。4月、皇太子が朱見深から朱見済に代えられると、江淵は太子少師の位を加えられました。また、四川巡撫僉都御史の李匡を職務不適格として弾劾し、罷免させました。9月、母の死により辞職し、喪に服しましたが、1453年（景泰4年）4月には、服喪期間を終えずに官に復帰したため、御史の周文に弾劾されましたが、景泰帝はこれを不問に付しました。

1454年（景泰5年）春、山東、河南、江北で飢饉が発生し、江淵は平江侯陳預とともに安撫に赴きました。彼は前後して軍民の便宜を図る十数事を上奏し、淮安府に常盈倉を守る月城を築き、広徐州に広運倉を守る東城を築くよう請願しました。これらの意見は全て採用されました。しかし、江北でたびたび飢饉が発生していたため、振恤に備えて淮安府の食糧を運ぶ者を追い返したところ、運河輸送の兵士が食糧を侵奪するという事件が発生。事態が奏聞され、御史の調査の結果、江淵は弾劾されました。官籍剥奪が相当とされましたが、廷臣の擁護により、不問に付されました。

兵部尚書の于謙が病に倒れた際、景泰帝は後任を推薦させました。江淵は兵部尚書の地位を狙い、策動しましたが、陳循らは彼を推すふりをしながら、商輅に起草させた上奏文に「石兵江工」の4字を入れました。1455年（景泰6年）1月、石璞が兵部尚書となり、江淵は石璞に代わって工部尚書に任命され、失意を味わいました。1457年（天順元年）1月、英宗が復位すると、江淵は陳循らとともに一兵士として遼東に流され、その地で生涯を終えました。

脚注

本記事の記述は、『明史』巻168 列伝第56を参考にしています。

参考文献

『明史』巻168 列伝第56

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