汲冢書

汲冢書について

『汲冢書』（きゅうちょうしょ）とは、中国の西晋時代において、戦国時代の魏王朝に関連する文献群のことを指します。これらの文献は、汲郡（現在の河南省北部）での盗掘によって発見され、その内容は歴史的にも重要なものとされています。

由来

西晋の時代に当たる太康2年（281年の説もあり、279年や280年とも言われる）に、不準という者が、魏の安釐王または襄王の陵墓を盗掘しました。この行為によって、75篇の竹簡が見つかりました。その中には既に知られていた『易経』や『国語』のような文献も含まれていた一方で、新たに発見された内容も多く、貴重な資料とされました。発見された竹簡は、晋の武帝の秘府に収められましたが、盗掘者はその価値を理解せず、照明用に火を使ってしまったため、多くの竹簡はダメージを受けてしまいました。

竹簡には科斗字と呼ばれる特別な文字が漆を使って書かれており、そのため解読は難航しましたが、束晳などの学者によって次第に解明されることとなります。特に杜預はその後『春秋経伝集解』を執筆している最中に竹簡発見の知らせを受け、実際にその竹簡を見る機会を得ます。彼は『竹書紀年』に関する後序を記し、この資料が『史記』における戦国時代の魏に関する誤りを正すために有用であるという評価を下しました。

現存の文献

現在、汲冢書として知られる文献は次の三つの種類が存在しますが、すべてが盗掘によって発見された竹簡に由来しています。

1. 逸周書（汲冢周書）
2. 竹書紀年
3. 穆天子伝

ただし、これらの文献のうち『逸周書』については、後の『隋書』経籍志において汲冢書とされているものの、実際には汲冢書に該当しないとの見解も存在します。また、『竹書紀年』は宋代以降に一度は失われ、現存するものは後世に偽造されたものとされています。この点からも、『汲冢書』は歴史研究において非常に貴重であり、その意義は今なお多くの関心を集めています。

汲冢書は、中国古代の歴史や文化、思想を理解する上で欠かせない情報源であるため、その内容の解読や研究は今後も盛んに行われることでしょう。

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