沖縄貝塚文化

沖縄貝塚文化：琉球弧の先史時代

沖縄貝塚文化（沖縄貝塚時代）は、沖縄諸島を中心とした先史時代の区分であり、おおよそ紀元前5000年頃から11〜12世紀頃のグスク時代の始まりまでを指します。本州の縄文・弥生時代とは異なり、狩猟・採取経済が中心であったため、独自の文化圏として捉えられています。また、同時期の先島諸島における先島先史時代についても解説します。

定義と区分

沖縄貝塚文化は、沖縄諸島における先史時代を指す名称です。水田稲作の痕跡が見られないことなどから、縄文・弥生時代とは異なる文化として位置づけられています。かつては本土と一括して貝塚時代と呼ばれていましたが、本土の貝塚時代が縄文時代と呼ばれるようになった後も、沖縄ではその相違点から貝塚時代・貝塚文化の呼称が用いられています。

区分法としては、前期・後期に分ける方法や、早期・中期・後期に分ける方法などがあります。いずれにしても、本土の縄文時代から平安時代頃までの期間に相当し、グスク時代開始まで狩猟採集生活が続いていたと考えられています。

前期・後期区分：紀元前4世紀頃までを前期、それ以降を後期とする。
早期・後期区分：早期から中期を縄文時代、後期を弥生時代から平安時代に相当させる。
早期・前期・中期・後期区分：各期を本土の時代区分に対応させる。

概要

沖縄貝塚時代に先行する旧石器時代の遺跡としては、山下洞人や港川人などが挙げられます。しかし、この時代の物質文化は未だ判然としておらず、本土や周辺地域の旧石器文化との共通性も見受けられません。また、沖縄諸島では前1万年頃 - 前5000年頃、先島では前1万8千年頃 - 前5000年頃および前2000年頃 - 前1000年頃の遺跡が断絶しており、空白の時代が存在します。

形質論

埴原和郎の「二重構造モデル」によれば、琉球人は縄文的形質を残しているとされますが、形質人類学上の研究では、北方系の形質が優勢であるという説も存在します。土肥直美は、琉球先史時代の人々が本土縄文人とは異なる形質を持ち、時代が下るにつれて本土大和人に近似してくることを指摘しています。

言語

現在の琉球諸語は、中世のグスク時代に日本本土から渡来した琉球祖語に起源があるとされ、貝塚時代に話されていた言語は全く異なるものだったと考えられています。崎山理や金関丈夫は、地名や語彙にオーストロネシア語の痕跡があると指摘しています。アレキサンダー・ボビンは、貝塚時代の琉球でアイヌ祖語である縄文語が話されていたという説を唱えています。

沖縄貝塚文化の特徴

安里進は、沖縄貝塚文化を「九州縄文文化の影響を受けつつ独自の経緯をたどった縄文文化」と総括しています。弥生時代の農耕文化が定着せず、漁労・採集が中心の生活が継続したことが特徴です。貝塚時代に続くグスク時代が現代琉球人と直接関連があり、文化面や集落の継続性が見られます。

貝の道の交易

グスク時代より前の奄美・沖縄および先島は、大和（九州）との交易が主体であり、主要交易品は奄美以南に産出する珍しい貝殻類でした。後期貝塚時代の前半はゴホウラやイモガイ、後半はヤコウガイを交易品とし、大和側は弥生土器や螺鈿細工の原料と取引していました。

信仰

貝塚時代からは土偶が発見されず、代わりにジュゴンの骨から作った蝶形骨製品が発見されています。これは祭祀具だと考えられており、縄文人とは異なった信仰を持っていた可能性があります。

各期の詳細

前期貝塚時代

本土の縄文時代に相当し、波状口縁土器が出土することから、縄文時代との関連が指摘されています。サキタリ洞遺跡からは、沖縄最古となる約8000年前の押引文土器が発見されています。

後期貝塚時代

紀元前4世紀頃以降、本土の弥生時代以降に相当します。

前半： ゴホウラやイモガイを交易品とし、大和側は弥生土器と交換していました。
後半： 交易品の主体がヤコウガイに替わり、螺鈿細工の原料として用いられました。698年から727年にかけて、大和朝廷と南島との交流が日本の史料に残っています。
晩期： 10世紀には日宋貿易、日麗貿易、南島貿易が盛んとなり、喜界島が中継点となりました。これにより、南島の貝塚時代が終焉を迎え、グスク時代への転換期を迎えたと考えられています。

グスク時代へ

貝塚時代に続くグスク時代は、農業技術の普及と集落の内的人口増加が観測されます。徳之島産のカムィ焼と九州肥前産の石鍋が広い地域で見つかっており、これらの文化がグスク時代の基盤になったと考えられています。喜界島は太宰府と南島（琉球弧）との間の南島交易の中継点となり、日宋貿易、日麗貿易と結びついていました。

先島先史時代

先島先史時代は、旧石器時代以降からスク時代（グスク時代に相当）開始までの期間で、新石器時代に相当します。前期と後期に分かれ、それぞれ異なる文化を持っていたとされています。本土の縄文文化や北琉球の貝塚文化とも異質であり、「先島新石器時代」とも呼ばれます。

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