河上謹一

河上謹一

河上謹一（かわかみ きんいち）は、安政3年（1856年）に生まれ、昭和20年（1945年）に没した、日本の外交官、実業家です。岩国藩出身で、東京大学法科大学の第一期卒業生というエリートでした。彼は、農商務省や文部省での勤務を経て、外交官としては上海総領事やアメリカ合衆国領事を務めました。その後、日本銀行や住友財閥で要職を歴任し、日本の近代化に大きく貢献しました。

生涯

修学

安政3年（1856年）、河上謹一は岩国藩士である河上毅の長男として誕生しました。幼少期から学問に励み、藩校養老館や敬義社で学びました。明治3年（1870年）には藩の貢進生として東京に出て、大学南校に入学しました。明治11年（1878年）には東京大学法科大学を卒業し、日本初の法学士となりました。その後、イギリスに留学し、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンやキングス・カレッジ・ロンドンで経済学や商法などを学びました。

外交官

明治15年（1882年）に帰国後、農商務省や文部省で官僚として勤務しました。明治17年（1884年）には東京商業学校の校長を兼任しました。明治18年（1885年）には、西郷従道に従い清に派遣され、その後外務省に転属して上海総領事に就任しました。明治21年（1888年）にはアメリカ合衆国領事としてニューヨークに赴任し、国際的な舞台で活躍しました。明治23年（1890年）には外務省通商局長に任命されましたが、大津事件の責任を取り辞任しました。

日本銀行勤務

明治24年（1891年）には、同窓の加藤高明の勧めで日本銀行に入行しました。取締役として、支配人、文書局長、銀行局長、金庫監査役、株式局長などを歴任し、日本銀行の運営に大きく貢献しました。明治30年（1897年）には理事に就任しましたが、明治32年（1899年）には当時の総裁であった山本達雄と対立し、他の重役と共に辞職しました。

住友本店理事

日本銀行を辞職後、住友財閥の伊庭貞剛に招聘され、住友本店理事に就任しました。住友銀行の拡大に尽力し、住友倉庫の設立や住友鋳鋼場の買収など、住友財閥の事業拡大に大きく貢献しました。しかし、明治37年（1904年）には伊庭貞剛の辞任に伴い、自身も辞職し、須磨町に隠棲しました。

晩年

大正期には、南満州鉄道監事、日本興業銀行監査役など、様々な企業の要職を務めました。晩年はリウマチに苦しみ、昭和20年（1945年）に死去しました。須磨寺に葬られています。

栄典

• - 明治17年（1884年）2月9日 - 正七位

著述

河上謹一は、多くの著述も残しています。

• - 井上良一講述「板権所有ノ論」『学芸志林』1巻2冊、明治10年6月
• - シリー講演「欧土連合ノ説」『学芸志林』4巻18冊、明治12年1月
• - 「経済一班」『学芸志林』7巻38冊、明治13年9月
• - 太拙居士「田口卯吉君ノ反訳サレタル大英商業史（一）」『東洋学芸雑誌』15号、明治15年12月
• - 太拙居士「田口卯吉君ノ反訳サレタル大英商業史（二）」『東洋学芸雑誌』17号、明治16年2月
• - ジョン・イェイツ原著『商業沿革史 上冊』
• - ジョン・イェイツ原著『商業沿革史 下冊』
• - 『日本商業教育論』
• - 「帝王学の御進講者たる杉浦氏の人格」『中央公論』大正5年12月号
• - 「故田中稲城君を憶ふ」『図書館雑誌』第21年2号、昭和2年2月

親族

河上謹一の親族には、以下のような人物がいます。

• - 父：河上毅
• - 妹：タヅ（田鶴）
• - 妻：コヨシ（古代志）
• - 長男：河上弘一
• - 長女：アヤノ
• - 次女：スミ
• - 次男：河上大二
• - 三男：河上兼士

脚注

参考文献

• - 有田数士「わが国実業界の巨星 河上謹一」『岩国短期大学紀要』第41号、岩国短期大学、2013年。
• - 奥村梅皐『大阪人物評論』小谷書店、1903年。
• - 内尾直二『人事興信録』（5版）人事興信所、1918年。
• - 嬌溢生『名士奇聞録』実業之日本社、1911年。
• - 西川正治郎「小引」『幽翁』栃原孫蔵、1931年。
• - 内尾直二『人事興信録』 上（10版）、人事興信所、1934年。

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