河村又介

河村又介（かわむら またすけ）

1894年1月1日、山口県に生まれた河村又介は、日本の法学者であり、裁判官です。1979年1月4日に84歳で亡くなりました。

学歴と初期の活動

旧制第七高等学校造士館を経て、1919年に東京帝国大学法学部政治学科を首席で卒業しました。在学中は新人会に所属し、吉野作造の初代助手として活動しました。また、メンガーの著書「新国家論」を翻訳・出版するなど、早くから研究者としての才能を発揮しました。

1922年5月から1924年12月にかけて、イギリス、ドイツ、フランスへ留学し、各国の法制度や政治思想を研究しました。

大学教授としての活動

帰国後、東北帝国大学教授（法文学部）を経て、1932年からは九州帝国大学教授（法文学部）として憲法講座を担当しました。教育者として多くの学生を育て、憲法学の発展に貢献しました。

戦後、憲法改正作業のための松本委員会のメンバーとなり、新憲法の制定に尽力しました。

最高裁判所裁判官としての活動

1947年8月、裁判官任命諮問委員会の諮問を受け、新憲法下における初代最高裁判所判事に就任しました。憲法に対する深い考察を持ち、「内容がよければいいではないか、というのは専制時代の善政主義に通じる功利主義ではないか」と述べるなど、形式だけでなく内容を重視する姿勢を示しました。

在任中は、砂川事件、尊属傷害致死事件、八海事件、チャタレー事件、東大ポポロ事件、三鷹事件、東京都公安条例事件など、多くの重要な裁判に関与しました。これらの事件を通して、憲法解釈や法適用において重要な役割を果たしました。

最高裁判所裁判官国民審査を2度経験し、いずれも信任されました。1949年1月23日の審査では、罷免を可とする票が1,239,270票（罷免を可とする率4.10%）、1960年11月20日の審査では罷免を可とする票が3,210,672票（罷免を可とする率9.01%）でした。2度国民審査を受けた最高裁判事は、1960年の審査において河村を含む5名が初の事例でした。

1963年12月31日に定年退官しました。退官後、毎日辞表を懐に入れていたと述懐するなど、常に職務に対する緊張感を持っていたことを示唆しています。

著作活動

河村は、憲法に関する著作も多数残しました。特に、憲法普及会編『新憲法抄』は、新憲法の解説書として広く読まれました。

主な著作は以下の通りです。

『直接民主政治』（日本評論社、1934年）
『選挙法』（日本評論社、1937年）
『憲法改正の諸問題』（惇信堂、1946年）
『新憲法抄』（憲法普及会編、岡山県東京事務所、1947年）
『国民投票と国民審査』（時事通信社販売部、1948年）
『新憲法と民主主義』（国立書院、1948年）
『国民主権』（河出書房、1955年）

これらの著作は、彼の憲法思想や政治思想を理解する上で貴重な資料となっています。

参考文献

野村二郎『最高裁全裁判官：人と判決』三省堂、1986年。ISBN 9784385320403。
河村力『ある憲法学者の足跡ーー元最高裁判事河村又介の生涯と現代史の一断面』（文芸社、2005年）
赤坂幸一「最若年の最高裁オリジナル・メンバー――河村又介」法律時報2016年3月号

外部リンク

* 最高裁判所判事一覧表

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