沼ノ端

北海道苫小牧市に位置する「沼ノ端（ぬまのはた）」は、市の東部に広がる広範なエリアを指す名称です。

この項目で扱う沼ノ端地区は、もともとの字名「沼ノ端」に加え、その後の住居表示によって生まれた東開町、拓勇西町、拓勇東町、北栄町、沼ノ端中央、ウトナイ北、ウトナイ南といった新しい町々を含んだ地域全体を指します。

地理的特徴

地区は勇払平野の西側に位置しており、かつては砂州や砂堆が連なる湿地帯でした。しかし、盛土や大規模な人工的な土地改変を経て、現在の市街地や工業地帯が形成されています。

地理的な特徴として、北東側にはラムサール条約登録湿地である海跡湖のウトナイ湖や、白鳥の飛来地として知られる丹治沼（白鳥湖）といった豊かな自然の湖沼群が隣接しています。一方、南西側は北海道の物流拠点である苫小牧港（西港区）に面しており、港湾機能の一端を担っています。

地区の西部、特に明野南通沿いのエリアは、西隣の新開町や柳町、明野新町といった地区と一体となり、苫小牧市内でも最大の規模を誇る商業集積地となっており、大型商業施設などが多数立ち並んでいます。

また、北海道の空の玄関口である新千歳空港や道都札幌方面へのアクセスも非常に良好で、地区の東側を日高自動車道が縦断しており、域内には沼ノ端西インターチェンジ（ハーフIC）も設置されています。

地区内には、勇払川や明野川といった河川も流れています。

地名の由来

「沼ノ端」という地名は、その名の通り、地区の北方に広がるウトナイ沼（ウトナイ湖）の「端（ほとり）」、すなわち湖沼の傍らに位置する土地であることに由来するとされています。

歴史的変遷

沼ノ端地区の発展は、1963年（昭和38年）に苫小牧港西港が開港したことに端を発します。

港湾機能の拡大に伴い、苫小牧市の人口と産業は右肩上がりに増加しましたが、当初は公害問題への懸念から、市中心部から離れた西側地域を主な居住エリアとする「職住分離」の政策がとられていました。しかし、人口増加のスピードに土地区画整理事業が追いつかず、また期待された「苫小牧東部開発計画」における重厚長大産業の集積が進まなかったことから、1980年代半ばからは「職住近接」の考え方が採用されるようになります。

これに伴い、沼ノ端地区では1990年代以降、JR沼ノ端駅の北側にあたる沼ノ端鉄北地区を中心に、大規模な宅地開発が積極的に進められました。

その結果、地区の人口は飛躍的に増加し、2013年（平成25年）時点では約26,000人に達し、わずか10年あまりでほぼ倍増という急成長を遂げました。

人口、特に年少人口の急増は教育施設に大きな影響を与えました。児童数の急激な増加に対応するため、小学校は2002年（平成14年）、2007年（平成19年）、2013年（平成25年）と相次いで既存校からの分離・新設が行われました。さらに、2009年（平成21年）には中学校も1校が分離・新設されるなど、教育インフラの整備が急ピッチで進められました。

交通網

地区の主要な交通網としては、まず北海道旅客鉄道（JR北海道）の千歳線と室蘭本線が乗り入れる沼ノ端駅があり、鉄道アクセスを担っています。

バス路線も充実しており、道南バスやあつまバスによる路線バスのほか、札幌などへの都市間高速バスも発着しています。

道路網では、自動車専用道路として日高自動車道が通り、沼ノ端西インターチェンジ（ハーフIC）が設置されています。一般国道としては、国道36号、国道234号、国道235号が地区を通過しています。また、北海道道259号上厚真苫小牧線や北海道道781号苫小牧環状線といった主要道道も域内を通っており、広範な交通ネットワークを形成しています。

地区内の主な施設

沼ノ端地区内には、急速な人口増加に対応して整備された学校施設が多く、苫小牧市立の小学校（沼ノ端小学校、拓進小学校、ウトナイ小学校）や中学校（沼ノ端中学校、ウトナイ中学校）が点在しています。その他、複数の保育園も設置されています。

また、苫小牧港に近接する地理特性を活かし、ウトナイ工業団地には共成レンテムや中山製鋼所（旧：中山三星建材）などの企業が進出しているほか、沼ノ端鉄北地区やウトナイ住宅・商工業団地にも様々な企業や事業所が集積しています。大型商業施設やロードサイド店舗も多く見られます。

歴史的な寺院として不退寺なども地区内にあります。

苫小牧市の発展とともに変貌を遂げた沼ノ端地区は、今もなお成長を続ける活気にあふれた地域です。

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