千葉胤貞

千葉胤貞（ちば たねさだ）

千葉胤貞は、鎌倉幕府末期から南北朝時代にかけての武将で、千葉氏の第9代当主・千葉宗胤の長男として生まれました。父・宗胤が異国警固番役で肥前国に赴任していた正応元年（1288年）に、肥前国小城郡で誕生したとされています。

胤貞は、下総国千田荘を本拠地とし、肥前国小城郡のほか、八幡荘や臼井荘も領有していました。北条氏得宗家当主で鎌倉幕府第9代執権の北条貞時より偏諱を受け、「胤貞」と名乗りました。これは、当時の武士社会において、主君から一字を賜ることは、忠誠を示す重要な儀礼でした。

父・宗胤が下総を不在にしていた間、叔父の胤宗が千葉氏の家督を相続していました。父の死後、南北朝の動乱が勃発すると、胤貞は北朝方として戦うことを選びました。建武2年（1335年）には、同族の相馬親胤らと共に、叔父・胤宗の子である貞胤の本拠地、千葉荘を攻めました。

しかし、同年11月、胤貞と親胤は足利尊氏の檄文に応じて上洛しました。その隙に、貞胤方は胤貞の本拠地である千田荘を蹂躙し、この騒乱は下総国中に広がりました。一方、南朝方の新田義貞軍に属した貞胤は、延元元年（1336年）10月に越前国木芽峠で足利尊氏軍の斯波高経に降伏しました。

胤貞は、下総へ帰る途中の同年11月19日に、三河国で病没しました。降伏した貞胤はその後北朝方に寝返り、貞胤の子孫が千葉氏宗家を称し存続することになりました。そのため、肥前国小城郡にいた弟の胤泰は九州[[千葉氏]]として新たな道を切り開きましたが、宗家の地位を失った千田氏はその後衰退していきました。

胤貞は日蓮宗に深く帰依していました。領地である小城郡に光勝寺を創建し、千田荘の浄妙寺、妙光寺、日本寺、八幡荘の法華経寺など、日蓮宗の寺院を保護しました。特に法華経寺には深く関わり、俗別当として第2代住持の日高を支援し、第3代住持の日祐は胤貞の猶子であったと伝えられています。胤貞は、肥前国小城郡と千田荘、八幡荘を次男の胤平に譲りましたが、臼井荘は法華経寺に寄進しています。

このように、千葉胤貞は、鎌倉時代末期から南北朝時代という激動の時代を生き抜いた武将であり、同時に日蓮宗を深く信仰した人物でもありました。彼の生涯は、当時の武士の生き方や、宗教観、そして時代の流れを映し出す鏡とも言えるでしょう。

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