浅川
油田は、
長野県長野市浅川に位置する
油田で、日本における石油産業の黎明期を語る上で重要な場所です。この
油田は、日本で最初に商業生産が行われた
油田として知られています。
歴史
浅川
油田の石油採掘の歴史は古く、少なくとも
江戸時代中期まで遡ります。
1753年(
宝暦3年)には、国学者の瀬下敬忠が著した『千曲之真砂』にその存在が記録されており、文献における初出とされています。当時、真光寺村(現在の
長野市真光寺)や
檀田村(現在の
長野市檀田)には
油井が存在し、そこで産出される石油は粘性が高く質も悪かったため、「ゴタ油」と呼ばれていました。しかし、この地域においては唯一の
油田として利用されていました。
1847年(
弘化4年)の
善光寺地震では、
油田一帯から
天然ガスが噴出し、その様子から「新地獄」と呼ばれるようになりました。この出来事は、浅川
油田が持つエネルギーのポテンシャルを示す出来事でした。
1871年(
明治4年)には、
水内郡桑名川村(現在の
飯山市)出身の
石坂周造(
山岡鉄舟の義弟)によって、日本初の石油会社とされる長野石炭油会社(後に長野石油会社に改称)が
東京府神田(現在の
東京都千代田区)に設立され、浅川
油田での石油の商業生産が開始されました。この会社は、日本初の石油精製所を妻科村石堂町(現在の
長野市北石堂町)の刈萱山西光寺境内に置き、真光寺村の
油井から産出される原油を荷車や馬を使って輸送していました。
しかし、設立翌年に新設備を導入したものの、期待されたほどの生産量には至りませんでした。さらに、5年後には精油所が焼失するという不運に見舞われ、
1881年(
明治14年)には長野石油会社は倒産してしまいました。その後、細々と工場の燃料などに利用されてきましたが、
1973年(
昭和48年)に採掘を終え、200年以上の歴史に幕を下ろしました。
現在
2011年現在、浅川
油田の跡地には
浅川ループライン真光寺ループ橋の下に石
油井戸が残されています。
長野県内には他にも
飯山市富倉などに
油田が存在しましたが、
油井が残っているのはここだけです。この場所は、日本の石油産業の歴史を今に伝える貴重な遺産となっています。
年表
1753年(
宝暦3年): 『千曲之真砂』に浅川
油田が記述される(文献初出)。
1847年(
弘化4年):
善光寺地震により
天然ガスが噴出し、「新地獄」と呼ばれる。
1856年(
安政3年): 真光寺村の新井藤左衛門が12本の井戸を掘り、1日に10石ほどの石油を産出。
1871年(
明治4年):
石坂周造が長野石炭油会社を設立(日本初の石油会社)。
1872年(
明治5年): 長野石炭油会社が長野石油会社に改称。
1873年(
明治6年):
新潟県に長岡支社を設立し試掘を開始。
1874年(
明治7年): 相良
油田(
静岡県)で日本初の機械掘りを開始。
1875年(
明治8年): 長野石油会社が精油所を移転。
1879年(
明治12年): 長野石油会社長野精油所が焼失。
1881年(
明治14年): 長野石油会社が倒産。
1920年(
大正9年): 酒井実がガラス工場の燃料に利用。
1941年(
昭和16年): 有賀扇作が採掘を再開。
1967年(
昭和42年): 酒井のガラス工場が廃業。
1973年(
昭和48年): 有賀が採掘を終え、浅川
油田の歴史に幕。
周辺施設
浅川ループライン真光寺ループ橋
ブランド薬師公園(八櫛神社)
関連項目
* 相良
油田