清津連絡所

清津連絡所は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の咸鏡北道清津市に所在する情報機関で、朝鮮労働党作戦部（現在の朝鮮人民軍偵察総局）に所属する工作員侵入基地です。別名として「121連絡所」「第459軍部隊」とも呼ばれます。北朝鮮が有する4つの海上連絡所の1つであり、高速スパイ船を配備していることが特徴です。

概要

清津連絡所は、元山連絡所、南浦連絡所、海州連絡所と並ぶ海上処の連絡所の1つで、日本海を経由して日本各地への侵入を主な任務としています。その活動は多岐にわたり、日本人拉致、北朝鮮工作員の日本への浸透、対共産圏貿易統制品（ココム製品）や武器・麻薬の運搬、さらには北朝鮮への密入国者の護送など、様々な秘密工作に関与しています。

2004年の時点で、清津連絡所には約1,200名の職員が所属しており、そのうち約400名が日本への侵入を専門とする侵入要員でした。対日工作は主にこの連絡所で行われており、工作員たちは日本への侵入を非常に容易なことと豪語していたといいます。彼らは「赤子の手をひねるようなもの」「メシ食ってクソするくらい簡単」と述べていたとされています。また、工作員教育を受けている学生の中で成績が最も低い者が清津連絡所に配属されることが多かったようですが、それは日本への侵入が容易であるからだと言われています。

アメリカ合衆国の偵察衛星の画像などから、清津連絡所は8隻の工作船を保有していると推定されています。これらの工作船は高速艇であり、500馬力以上のOMC高速エンジンを4機搭載し、50ノット近い速度で航行できます。普段はレーダーに捕捉されないよう、エンジン1機を低速で稼働させています。外見は日本の漁船に偽装されており、工作員たちは日本の漁師のような服装をしています。また、船名も日本名を使用しており、工作母船には船名を簡単に付け替えられるような細工が施されています。

拉致事件との関連

清津連絡所は、日本人拉致事件にも深く関わっています。拉致被害者のうち、横田めぐみさん（1977年11月失踪）や田口八重子さん（1978年6月失踪）は、工作船で清津連絡所に移送された可能性が高いとされています。元北朝鮮工作員の安明進氏によれば、13歳だった横田めぐみさんを拉致したのは清津の工作員であった丁順権氏であるとされています。また、1963年に能登の高浜港沖で失踪した寺越武志さんも、清津に到着したと自ら証言しています。さらに、久米裕さん（1977年9月失踪）、地村保志さんと浜本富貴恵さん（1978年7月失踪）、蓮池薫さんと奥土祐木子さん（1978年7月失踪）についても、清津連絡所または元山連絡所に運ばれ、北朝鮮に連れ込まれたと考えられています。

1999年の能登半島沖不審船事件では、海上自衛隊の追跡を振り切って最終的に入港したのが清津港でした。この事実は、清津連絡所が北朝鮮の対日工作において重要な役割を果たしていることを示しています。

また、2015年には、この連絡所から内部機密情報が大量に漏洩したという報道もあり、その組織運営の脆弱性が指摘されました。

拉致被害者の目撃情報

2000年に韓国に亡命した元国家保衛部将校の「金国石」（仮名）は、2003年に拉致被害者の松本京子さんを北朝鮮で目撃したと証言しました。「金」は、1994年から1997年の間、清津連絡所で「キョウコ」という女性を4度目撃し、その女性が松本京子さんの写真とよく似ていると述べています。

1999年に韓国に亡命した元国家保衛部指導員の権革氏も、2003年に清津連絡所で遠山文子さんを目撃したと証言しています。遠山文子さんは、1973年7月に石川県羽咋市柴垣で失踪した元会社員で、当時21歳でした。権革氏によれば、彼が遠山さんに会ったのは1993年6月のことで、清津連絡所に検閲に行った際に宴席で酒を酌をしてくれたのが遠山さんだったと述べています。

これらの証言は、清津連絡所が拉致被害者の収容場所の一つとして利用されていた可能性を強く示唆しています。

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