南浦連絡所

南浦連絡所について

南浦連絡所（ナムポれんらくじょ）は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の南浦特別市に所在する情報機関です。この施設は、朝鮮労働党作戦部（現在の朝鮮人民軍偵察総局）に所属しており、工作員の侵入拠点としての役割を担っています。また、別名「第753軍部隊」とも呼ばれています。

南浦連絡所は、北朝鮮が運用する4か所の海上連絡所のうちの1つで、他の連絡所には、清津連絡所（咸鏡北道清津市）、元山連絡所（江原道高城郡）、海州連絡所（黄海南道海州市）があります。これらの連絡所は、北朝鮮が韓国や日本などの周辺国に工作員を侵入させるための重要な拠点となっています。

特に南浦連絡所は、韓国の木浦市をはじめとする南海岸地域、済州島、さらには日本の九州地方一帯への侵入を担当しています。元山連絡所と共に「商船連絡所」とも呼ばれており、所属する工作員は貿易船の船員に偽装し、韓国や海外に出入りして、海賊行為や麻薬・武器などの密貿易に関与しているとされています。

歴史と事件

南浦連絡所は、過去に多くの事件に関与しています。その一つが、韓国の女優であった崔銀姫が1978年1月に香港で北朝鮮工作員に拉致された事件です。この事件では、南浦連絡所が拉致作戦の拠点として使用されました。また、日本人拉致被害者のうち、市川修一・増元るみ子（1978年8月12日失踪）、原敕晁（1980年6月20日失踪）らは、工作船によって南浦連絡所へ移送され、その後、北朝鮮に入国したと考えられています。

さらに、1999年12月27日には、全羅南道麗水の海岸に侵入した半潜水艇が韓国海軍によって撃沈されました。この半潜水艇も南浦連絡所の所属であったとされています。これらの事件は、南浦連絡所が北朝鮮の工作活動において重要な役割を果たしていたことを示しています。

組織と活動

南浦連絡所は、高速スパイ船を配備しており、これらの船を用いて工作員の侵入や物資の輸送を行っています。また、連絡所の所員は貿易船の船員に偽装することで、海外での活動を隠蔽しています。彼らは、密貿易や海賊行為、情報収集など、多岐にわたる活動に従事していると考えられています。

南浦連絡所のような北朝鮮の情報機関は、北朝鮮の対外工作活動において重要な役割を果たしており、国際社会にとっては警戒すべき存在です。

参考資料
清水惇『北朝鮮情報機関の全貌―独裁政権を支える巨大組織の実態』光人社、2004年5月。ISBN 4-76-981196-9。
高世仁『拉致 北朝鮮の国家犯罪』講談社〈講談社文庫〉、2002年9月（原著1999年）。ISBN 4-06-273552-0。
全富億『北朝鮮のスパイ戦略』講談社〈講談社プラスアルファ文庫〉、2002年10月（原著1999年）。ISBN 4-06-256679-6。
崔銀姫、申相玉『闇からの谺（こだま） - 北朝鮮の内幕（上）』文藝春秋〈文春文庫〉、1989年3月（原著1988年）。ISBN 4-16-716202-4。


関連項目
朝鮮労働党作戦部
朝鮮民主主義人民共和国の諜報・情報機関

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