清瀧権現

清瀧権現（せいりゅうごんげん、またはせいりょうごんげん）は、京都市伏見区に位置する真言宗醍醐派の総本山、醍醐寺の守護女神として信仰されています。清瀧大権現とも呼ばれ、「清滝権現」とも表記されます。「瀧」は「滝」の旧字体です。この女神の本地仏は、准胝観音と如意輪観音とされています。

清瀧権現の沿革

清瀧権現は、一般的な経典には記述されていません。弘法大師空海の遺告によると、その起源はインド神話に登場する八大竜王の一、沙掲羅（しゃがら、サガーラ）の第三王女（または第四王女）である善女（善如）龍王に遡ります。この善女龍王は、無熱地という場所に住み、害をなさない善龍であり、真言の奥義を敬って出現したとされています。その姿は、8寸（約2.5cm）の金色の蛇で、9尺（約3m弱）の蛇の頂上に位置すると伝えられます。

空海が神泉苑で雨乞いの修法を行った際、善女龍王が出現したとされています。その後、善女龍王は中国の密教寺院である青龍寺に飛来し、同寺の守護神「清龍」となりました。弘法大師空海が青龍寺で仏法を学んだ際、善女龍王に三昧耶戒を授けてほしいと懇願しましたが、叶いませんでした。空海が帰国する際、善女龍王は船中に現れ、密教を守護することを誓ったため、京都洛西の高雄山麓に勧請されました。

この際、海を渡ったことから、龍の字に「さんずい」を加えて「清瀧権現」と敬称されるようになったと伝えられています。また、高雄山麓の川も「清滝（きよたき）」と改称されました。さらに、恵運という僧によって安祥寺にも勧請されました。

清瀧権現は、日本に飛来後、複数の寺院を巡り、900年（昌泰3年）頃に聖宝によって現在の安置所である醍醐寺山頂に降臨し、留まったとされています。以後、醍醐寺に伝わる真言密教を守護する女神として信仰されています。

1097年（承徳元年）、勝覚によって、清瀧権現は醍醐寺の山上と山下に分祀されました。それぞれに本殿と拝殿が設けられましたが、清瀧権現が降臨したとされる醍醐水泉の正面に建つ「上醍醐」の「清瀧宮拝殿」は室町時代の建立で国宝に指定されています。また、醍醐山麓の「下醍醐」境内にある「清瀧宮本殿」は国の重要文化財となっています。

清瀧権現を祀る主な社寺

清瀧権現は、主に密教の鎮守神として、各地の寺院で祀られています。以下は代表的な例です。また、かつては神社でも祀られていましたが、明治時代の神仏分離令以降、祭神を「大綿津見神」に変更するなどの例が見られます（浦安の清瀧神社など）。

• - 青龍宮：京都市右京区に鎮座する神社。もとは高野山神護寺の鎮守でした。一間社流造の社殿が特徴です。
• - 上醍醐：醍醐寺の山上に位置し、清瀧宮拝殿（国宝）と本殿があります。
• - 下醍醐：山上の上醍醐から参拝しやすいように山下に勧請されたもので、拝殿と本殿（重要文化財）があります。
• - 川崎大師：醍醐寺から勧請されたとされる清瀧権現堂があります。
• - 成田山新勝寺：鎮守社である清瀧権現堂（1732年建立）に地主妙見とともに祀られています。
• - 高尾山薬王院：行場「蛇滝」に青龍堂があり、「青龍大権現」が祀られています。
• - 高野山：金剛峯寺壇上伽藍の阿字池そばに「清瀧大権現社」があります。
• - 西笠取清瀧宮：祭神は瓊瓊杵尊。醍醐山東麓に鎮座し、「清瀧宮の月見」は笠取八景の一つとして知られています。
• - 東笠取清瀧宮：祭神は大山祇神。笠取山中に鎮座しています。

これらの寺社は、清瀧権現の信仰が広く根付いていることを示しています。清瀧権現は、その神秘的な起源と、密教を守護する女神としての役割から、多くの人々に崇敬されています。

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