源俊明

源俊明（みなもと の としあき）は、平安時代中期から後期にかけて活躍した公卿・歌人です。醍醐源氏高明流の出身で、権大納言・源隆国の三男として生まれました。最終的には正二位・大納言にまで昇りつめ、祖父の源俊賢以来、三代続けて大納言という顕官に就いた家柄でした。

人柄と逸話

『古事談』などには、能吏としての逸話が残されており、その一方で『続後撰和歌集』や『続拾遺和歌集』などの勅撰[[和歌集]]に和歌が収録されるなど、多才な人物であったことが伺えます。

父・隆国は、藤原頼通の側近として、東宮時代の後三条天皇に無礼な態度をとっていたため、後三条天皇は即位後、隆国の子息たちに罪を着せようと考えていました。しかし、長男の隆俊と次男の隆綱は、その才能を天皇に愛され、近習として重用されることとなりました。そこで、後三条天皇は三男の俊明にこそ鬱憤を晴らそうとしましたが、内裏の火災の際に勇敢な行動をとった俊明の姿を見て、その才能を愛で、かえって昇進させたと言われています。

また、藤原師基との関係も特筆すべき点です。師基の最初の妻は、隆国の従弟である源定良の娘で、白河天皇の乳母でしたが、後三条天皇が即位する前に亡くなっています。その後、師基は隆国の三女を妻に迎え、さらに前妻の娘（つまり白河天皇の乳母子）を俊明に嫁がせています。師基の娘が長男の能俊を生んでいることから、この婚姻は後三条天皇の在位中に行われたと考えられ、俊明は妻を通じて後三条天皇と白河天皇に繋がりを持っていたことになります。

後三条天皇の崩御後も、引き続きその息子の白河天皇の近習として重用され、退位後の院別当としても厚く信頼されました。その剛直な人柄は、廟堂において重きをなしました。白河院政下では、上皇の気ままで身分秩序を無視した叙位除目に対して、たびたび諫言を行っています。

特に有名な逸話として、嘉承2年（1107年）に5歳の鳥羽天皇が即位した際の話があります。天皇の外伯父にあたる藤原公実が、自ら摂政に就任することを主張し、公実と従兄弟にあたる白河院は悩んでいました。しかし、俊明は頼通・師実が摂関として廟堂に尽くした功績は大きく、その嫡流である忠実を抑えて、公季以後、五代にわたり傍流であった公実を摂関に就かせるのは不当であると主張し、白河院を思いとどまらせました。この一件により、天皇との外戚関係の有無にかかわらず、御堂流の正嫡が摂関を継承するという制度が確立しました。これにより、摂関家の嫡流は危機から救われましたが、外戚と摂関の分離が常態化したことで、摂関政治の再興は難しくなったと言えます。

系譜

父：源隆国
母：源経頼の娘
妻：藤原師基の娘
男子：源能俊（1070-1134）
生母不明の子女
男子：源実明
男子：源能明
男子：源明賢
男子：源憲明
男子：俊源
男子：増俊
男子：隆絮（または隆蕠）
男子：静観（または静灌）
女子：藤原忠教継室
養子
男子：源国明（1064-1105） - 藤原師基と源定良の娘との間の子

脚注

参考文献

『国史大辞典 第13巻』吉川弘文館　国史大辞典編集委員会(編）ISBN 4642005137
『日本の歴史5　王朝の貴族』土田直鎮　中央公論社

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