源経頼

源経頼（みなもと の つねより）

平安時代中期の公卿

源経頼は、平安時代中期に活躍した公卿で、宇多源氏の流れを汲んでいます。父は参議を務めた源扶義で、その次男として生まれました。官位は正三位・参議にまで昇り、公卿として朝廷に仕えました。

経歴

長徳4年（998年）に従五位下に叙爵し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。その後、寛弘2年（1005年）には玄蕃頭に任ぜられ、寛弘7年（1010年）には従五位上・少納言となりました。長和3年（1014年）には左少弁に任ぜられ、以降、弁官として着実に昇進を重ねました。長和4年（1015年）に正五位上、寛仁3年（1019年）に右中弁、寛仁4年（1020年）には従四位上・権左中弁、治安2年（1022年）に正四位下、治安3年（1023年）には左中弁と、弁官の要職を歴任しました。

長元2年（1029年）には蔵人頭兼右大弁となり、翌長元3年（1030年）には参議に任ぜられ、ついに公卿の仲間入りを果たしました。議政官としては、中宮権大夫、兵部卿、左大弁、勘解由長官などを務め、長暦2年（1038年）には正三位に至りました。しかし、長暦3年（1039年）8月24日に薨去し、その生涯を閉じました。享年は55歳または64歳とされています。

人物

源経頼は、宇多天皇の4世孫として、祖先から受け継いだ源家流の故実や礼法に通じていました。その一方で、藤原道長、藤原頼通、藤原実資、藤原公任、藤原行成といった当時の有力者たちとも交流し、藤原氏諸流の儀礼も熱心に学んだとされています。これらの知識を基に、『西宮記』の勘物（青縹書）を作成し、また、自らの日記である『左経記』を著しました。『左経記』や経頼の故実学は、後世の源俊明、源能俊、源俊雅ら醍醐源氏高明流の官人や、藤原頼長、藤原忠親ら平安末期の公卿に大きな影響を与えました。その他にも、『類聚符宣抄』という著作も残しています。

逸話

従兄弟にあたる藤原頼通との間には、いくつかの逸話が残されています。経頼はしばしば書籍を頼通に奉納していたとされており、二人の関係は親密であったことが伺えます。しかし、その一方で、以下のような逸話も伝えられています。

ある時、頼通が参内した際、陽明門の内側の貴人用の通路に、誰かが落としたと思われる大きな袋が落ちていました。随身が中身を確認したところ、文様のある生地を使った束帯装束一揃えが入っていたのですが、襟が非常に広く、その品々が全て粗悪なものであったため、経頼が落としたものだと考えられました。頼通は屋敷に戻った後、長絹20疋を持たせて経頼のもとに使いを遣わしたとされています。

また、別の逸話では、頼通が清涼殿の板敷で経頼を譴責したとされています。これは、経頼が源師房のことを謗ったためだとされています。経頼は汗を流しながら退出しましたが、紫宸殿の北庇で源経長と出会った際に、生気のない様子で「頼通殿下に譴責を受けた。運が尽きてしまった」と語ったとされています。その後、経頼は間もなく病に倒れ、亡くなったと伝えられています。

官歴

以下は、『公卿補任』に基づく経頼の官歴です。

長徳4年（998年） 正月7日：従五位下（中宮御給）
寛弘2年（1005年） 2月：玄蕃頭
寛弘6年（1009年） 10月1日：次侍従
寛弘7年（1010年） 正月7日：従五位上（玄蕃頭労）。2月16日：少納言
寛弘8年（1011年） 2月2日：和泉守（別功）
長和3年（1014年） 正月24日：兼左少弁
長和4年（1015年） 10月21日：正五位上（造宮行事賞）
長和5年（1016年） 正月29日：五位蔵人、左少弁兼帯
寛仁2年（1018年） 正月27日：兼近江守、止蔵人、左少弁兼帯
寛仁3年（1019年） 12月21日：右中弁、近江守兼帯
寛仁4年（1020年） 正月5日：従四位下（弁）。2月6日：従四位上（為和泉守時造宣耀殿功）。3月：兼内蔵頭。11月29日：権左中弁、頭・守兼帯
治安2年（1022年） 正月5日：正四位下（石清水行幸行事賞）。4月3日：兼中宮亮、弁兼帯
治安3年（1023年） 12月15日：左中弁（平野大原野行幸行事追賞可給之由）、頭・亮兼帯
治安4年（1024年） 正月22日：兼丹波守。4月22日：兼造大安寺長官
長元2年（1029年） 正月24日：右大弁。正月27日：蔵人頭、右大弁兼帯
長元4年（1031年） 2月17日：兼近江権守
長元5年（1032年） 正月6日：従三位（平野大原野行幸行事追賞）
長元8年（1035年） 10月14日：兼中宮権大夫
長元9年（1036年） 9月6日：止中宮権大夫（中宮崩御）
長暦元年（1037年） 11月5日：兼兵部卿。日付不詳：兼伊予権守
長暦2年（1038年） 正月7日：正三位。6月7日：兼左大弁
時期不詳：勘解由長官

系譜

『尊卑分脈』によると、源経頼の系譜は以下の通りです。

父：源扶義
母：源是輔の娘
先妻：不詳
男子：源清房 - 従四位下少納言
男子：尊覚 - 権少僧都
男子：済延 - 権大僧都
男子：隆昭 - 延暦寺
女子：源隆国室
後妻：藤原行成の娘
男子：源信房 - 正四位下若狭守
女子：藤原資仲室

脚注

参考文献

『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第三篇』吉川弘文館、1987年
浅見和彦、伊東玉美『新注 古事談』笠間書院、2010年
河北騰「左経記と栄花物語」『立正大学文学部論叢』098号、1993年

外部リンク

『摂関期古記録データベース』国際日本文化研究センター（『左経記』の読み下し文を公開）

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