滇緬線

滇緬線（てんめんせん）とは

滇緬線は、20世紀初頭に計画された、中国雲南省の昆明とビルマ（現在のミャンマー）を結ぶ予定であったメーターゲージの未完成鉄道です。第二次世界大戦中に建設が始まりましたが、全線開通には至らず、戦後、昆明北駅から一平浪駅間が昆一線として完成したものの、その後の成昆線の開通に伴い大部分が廃止されました。現在は、昆明北駅と石咀駅間のわずか12.9kmが昆石線として残るのみとなっています。

計画の背景

滇緬線の構想は19世紀に遡ります。当時、イギリスは東南アジアからビルマを経由して中国へと続く交易路の利権獲得を目指しており、その一環としてこの鉄道計画が浮上しました。この鉄道の開通によって、ヨーロッパと中国南部との間をマラッカ海峡を経由せずに往来・交易することが期待されていました。

1885年にイギリスがビルマを併合し、1886年には中国との間でビルマ条約を締結、1887年には中英続議ビルマ条約が締結され、その中で将来的に雲南省で中国が鉄道を建設する際には、ビルマ側のイギリスの鉄道と接続することが定められました。

1910年にはフランス領インドシナのハノイと昆明を結ぶ滇越線が開通し、イギリスは中国南部との交易における利益をフランスに奪われるのではないかという危機感を抱きました。イギリスは英仏インドシナ協定を活用して鉄道敷設権を確保しましたが、その後、本鉄道の建設計画は停滞しました。

建設開始

1938年、日中戦争の激化に伴い、ビルマから中国への軍事物資輸送を目的として、中国国民党政府、イギリス、アメリカの間で鉄道建設の協定が結ばれました。アメリカが出資し、中国とイギリスが鉄道を建設することで合意し、測量が開始されました。

同年12月5日、全ルートは東西2部15工区（45小工区）に分けられ、建設が開始されました。建設には30万人以上が動員されましたが、亜熱帯の不衛生な環境、マラリアなどの伝染病、食糧不足、過酷な労働条件のため、多数の死者が出ました。ルートは中国側から昆明より西に向かい、安寧、禄豊、広通、楚雄、鎮南（南華）を経て、そこから一旦北上して姚安、再び西に進んで清華洞を経由、祥雲の南側で南化して弥渡、南洞、公郎、雲県、孟定、そして国境の蘇達に至り、国境を越えてビルマのシャン州クンロンを経由し、ラーショーでビルマ鉄道に接続する計画でした。

全線で1,000kmを超え、そのうち866kmは中国国内を走る計画でした。鉄道規格は滇越線に準じることとなり、ゲージ幅もビルマ側の鉄道に合わせて1,000mmのメーターゲージとなりました。

1940年、日本の仏印進駐に伴う滇越線の遮断などにより工事は一時遅滞しましたが、1941年にはビルマ・ロード経由で資材が運搬され、建設が再開、急速に進みました。1941年2月には昆明から石咀まで、10月には安寧までの区間が開通しました。石咀-安寧間には急勾配があるため、ループトンネルが設置され高度を稼いでいます。同年にはアメリカン・ロコモティブ社へ25台のマレー式機関車が発注されました。

建設の中止と放棄

1942年、日本は援蔣ルートを遮断するためにタイ経由でビルマに進攻し、4月末にはラシオを占領しました。5月にはビルマから雲南省に入り怒江に到達し、拉孟（松山）・騰越（謄衝）・龍陵を要塞化し、怒江西岸に400kmにわたる防衛線を展開しました。そのため、国民党軍は退却し、ビルマ公路の橋を破壊、建設中の滇緬線も日本軍に利用されないよう一部を破壊し、建設は中断されました。中断当時、各工区における土木工事の進捗率は45%から80%に達していました。

戦後、ビルマの独立によりイギリスは本鉄道から撤退、中国もビルマの重要性の低下と建設の困難さから建設を放棄しました。しかし、昆明駅から清華洞駅間は、現在の成昆線・広大線とほぼ同じルートを走っています。

昆一線・昆石線

建設中途の区間のうち、昆明から一平浪（禄豊と広通の中間にある鉱山のある町）までの区間は昆一線として活用されることとなり、1958年3月に測量開始、4月に起工し、1959年3月に開通しました。

しかし、一平浪駅まで平行して走る成昆線が1970年に開通したため、一平浪駅-草鋪駅間88kmは1970年に廃止され、草鋪駅-麒麟駅と安寧駅-石咀駅の区間も1980年に廃止されました。安寧駅から麒麟駅は昆明鉄鋼公司に移管され、わずかに残された昆明-石咀間の12.9kmは「昆一線」から「昆石線」に改められました。

1979年の昆明南駅への乗り入れ廃止に伴い、メーターゲージの路線は昆明北駅に集められたため、現在、昆石線は昆河線の支線となっています。

現状

滇緬線のうち、昆明から一平浪間は一時鉄道が走っていたため、山間部の廃線跡は比較的明確に残っています。未成区間も雲県までは比較的遺構が残っており、祥雲や雲県など各所に記念碑が建立されています。また、ビルマ側からもラシオからの建設跡が数十キロにわたって残っており、公開されている衛星写真などで確認することができます。

参照

昆河線

外部リンク

Burma Banshes - 建設中の滇緬線の写真

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