滑剤

滑剤とは

滑剤とは、粉末、固体、顆粒状の素材を加工する際に、素材と加工機、または素材の粒子同士の摩擦を軽減させる目的で使用される添加剤です。滑剤は、製品の品質向上や製造効率の改善に不可欠な役割を果たします。

滑剤の種類と特徴

滑剤は、その性質から大きく以下の2種類に分類されます。

外部滑剤: 素材と加工機との摩擦を軽減し、付着を防ぐ効果があります。
内部滑剤: 素材同士の摩擦を軽減し、素材の流動性を高める効果があります。

また、化学構造による分類も存在します。

炭化水素系: 流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどが挙げられ、代表的な外部滑剤です。ただし、ポリ塩化ビニルとの相性は良くありません。
脂肪酸系: ステアリン酸などが代表的で、比較的安価かつ低毒性です。内部滑性を持ち、錠剤の打錠時などに最適な濃度で添加されます。
高級アルコール系: ステアリルアルコールなどが用いられ、比較的安価かつ低毒性で、外部滑性を持ちます。
脂肪族アミド系: ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸アミドと、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドのアルキレン脂肪酸アミドがあります。
金属石鹸系: ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられます。ステアリン酸鉛・ステアリン酸亜鉛は外部滑性、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウムは内部滑性を持ちます。ただし、ステアリン酸鉛などは毒性が高いため食品には使用できません。
エステル系: ステアリン酸モノグリセリドやステアリルステアレート、硬化油などが使われ、内部滑性と外部滑性を併せ持つものがあります。
鉱物系: タルクや軽質無水ケイ酸などの粉末で、内部滑性を持ち、錠剤の打錠の際に最適な濃度で添加される場合があります。


これらの滑剤は、用途や素材に応じて単独または複数組み合わせて使用されます。

滑剤の用途

滑剤は、様々な分野で利用されています。

錠剤・錠菓: 原料粉末の流動性向上、製造装置への付着防止、表面の光沢付与を目的として、ショ糖[[脂肪酸エステル]]やグリセリン[[脂肪酸エステル]]、ステアリン酸などが使用されます。
製パン: 流動パラフィンが離型剤として、製造機材への付着を防止するために使用されます。
合成樹脂の製造: 合成樹脂と加工機、または合成樹脂の粒子同士の摩擦を軽減するために、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アミド系、金属石鹸系などの滑剤が使用されます。

使用上の注意点

滑剤は、適切な濃度で使用することが重要です。過剰な添加は、かえって製品の品質を損なう可能性があります。例えば、錠剤の場合、滑沢剤を過剰に添加すると、消化管内での薬物の溶出を遅延させる恐れがあります。

また、食品や医薬品に使用する滑剤は、安全性が特に重要です。毒性の低いものを選び、適切な品質管理を行う必要があります。

日本語と英語の差異

日本語では滑剤や滑沢剤と総称されますが、英語では流動化を促進する「glidant」、滑性効果のある「lubricant」、付着を防ぐ「antiadherent」と区別されます。「glidant」は日本語で「流動化剤」と呼ばれることもあります。

まとめ

滑剤は、製品の品質向上や製造効率の改善に不可欠な添加剤です。種類や用途に応じた適切な選択と使用が重要となります。特に、食品や医薬品に使用する場合には、安全性を考慮し、適切な品質管理を行う必要があります。

参考資料
戸田 義郎・門田 則昭・加藤 友治（編）『食品用乳化剤 -基礎と応用-』光琳、1997年。
谷村 顕雄『食品添加物の実際知識（第4版）』東洋経済新報社、1992年4月16日。ISBN 4-492-08349-9。
皆川 源信『プラスチック添加剤活用ノート』工業調査会、1996年。ISBN 4-7693-4103-2。
上釜 兼人・川島 嘉明・竹内 洋文・松田 芳久（編集）『最新製剤学（第3版）』廣川書店、2011年3月20日。ISBN 978-4-567-48372-8。

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