滝口新太郎

滝口新太郎：俳優からアナウンサーへ、そしてソ連での生涯

滝口新太郎（1913年-1971年）は、日本の俳優、アナウンサーとして知られる人物です。子役時代から華々しい活躍を見せ、日活スターとして人気を博しましたが、その後の人生は、シベリア抑留、ソ連への亡命、そして女優・岡田嘉子との結婚と、数々のドラマに彩られています。この記事では、彼の波乱に満ちた生涯を詳細に紐解きます。

華麗なる子役時代から日活スターへ

東京生まれの滝口は、1925年、わずか12歳で井上正夫一座に入り、舞台俳優としてキャリアをスタートさせました。その後、映画『狂つた一頁』で映画デビューを果たし、松竹蒲田撮影所に入社。野村芳亭監督作品などに出演し、着実に経験を積んでいきました。少年期から青年期への移行期には苦戦したものの、五所平之助監督作品『マダムと女房』『若き日の感激』などに出演し、美少年として注目を集めるようになりました。

1932年、日活太秦撮影所へ移籍。時代劇、現代劇を問わず活躍し、二枚目俳優として人気を博しました。大谷日出夫、大河内傳次郎らそうそうたる俳優陣と共演し、多くの作品で重要な役割を果たしました。日活多摩川撮影所、京都撮影所と拠点を移しながらも、多くの映画に出演。特に女性、特に女学生層からの圧倒的な人気を誇りました。

日活での活躍は、原節子のデビュー作『ためらふ勿れ若人よ』への主演や、花柳小菊との「あこがれコンビ」としての売り出しなど、数々のエピソードに彩られています。舞台活動にも復帰し、大阪中座での公演では、後に妻となる岡田嘉子と共演。俳優としての才能を存分に発揮しました。1940年頃までは主演作も多くありましたが、その後は助演に回るようになり、1942年には大映に移籍しました。

戦争とシベリア抑留、そしてソ連での新たな人生

1943年、滝口は陸軍に応召され、満州に駐留。終戦後、ソ連軍の捕虜となり、シベリアに抑留されました。厳しい抑留生活を送りながらも、釈放後、社会主義の理念に共感し、ソ連に残留することを決意。ハバロフスク放送局の日本語アナウンサーとして、新たな人生を歩み始めます。

ソ連滞在中、滝口はモスクワ放送日本語課で勤務していた岡田嘉子と手紙のやりとりを始め、やがて結婚に至ります。結婚後もモスクワ放送でアナウンサーとして活躍し続けました。

晩年とその後

しかし、1971年、肝硬変のため逝去。満58歳でした。彼の死は、満州で戦死したと思っていた多くのファンに衝撃を与えました。遺骨は妻・岡田嘉子によって日本に持ち帰られ、多磨霊園に納められました。

滝口新太郎の生涯は、俳優として華々しく活躍した時代、戦争による悲劇、そしてソ連での新たな人生という、ドラマチックな展開に満ちたものでした。彼の名は、日本の映画史、そして日本の放送史に、深く刻まれています。

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