滝川忠雄

滝川 忠雄の生涯

滝川 忠雄（たきがわ ただお）は、1815年に生まれ、1888年に亡くなった江戸時代後期の尾張藩士であり、年寄（家老）としての肩書を持っていました。彼は通称として長十郎、権十郎、伊勢を使用し、従五位下豊後守、伊勢守の官位を賜りました。また、号は一楽とされました。

幼少期と家督相続

文化12年（1815年）に、父・滝川忠據の間に誕生した忠雄は、幼名を亀松といいました。彼がわずか12歳の時、父の急逝により家督を継ぎました。ここで、彼の祖父である滝川忠暁が長年にわたって年寄を務めていた功績が評価され、3063石4斗3升3合の家禄を授与されました。このことにより、忠雄は大寄合に編入され、若くしてその地位を確立しました。

藩政における役割

天保5年（1835年）、忠雄は21歳で用人として藩に仕官しました。後に寺社奉行を兼務し、1844年には側用人に任命されます。側用人としての活動の中で、七宝焼の発明者である梶常吉を藩主に報告し、藩における常吉の雇用を支援しました。忠雄自身も自宅に窯を設置し、楽焼を始めました。

嘉永2年（1849年）、徳川慶勝が藩主に就任すると忠雄は35歳で年寄に昇進します。彼は藩政改革を鋭意支援し、嘉永5年（1852年）には幕閣と連携をとるために江戸に赴きました。翌年、名古屋で300名の町民を前にして藩の財政的困難を訴える演説を行い、寄付を募るという行動にも出ます。この功績により、忠雄は同年末に従五位下に叙爵されます。

政治的変遷と退任

安政3年（1856年）には一度、加判を免ぜられて執政の職を退くことになりますが、安政の大獄が起こった1858年には慶勝が隠居を命じられ、弟の茂徳が藩主に就任すると再び加判を命じられ、政務に復帰しました。この時期、忠雄は茂徳を補佐し、藩の軍制改革への道を拓きましたが、藩内の尊王攘夷派からは「洋風を好む」と非難されることもありました。

文久3年（1863年）、政局が慶勝派に移行し、忠雄の立場が危うくなる中、彼は病気を理由に隠居を申し入れます。家督は嫡男の亀松（滝川忠挙）に譲り、年寄を辞した後、元治元年12月（1865年2月）には水戸天狗党による藩領接近の際に一時的に軍事指揮に戻ることもありました。

晩年と死去

慶応4年（1868年）には戊辰戦争の影響で佐幕派として粛清され、蟄居を余儀なくされましたが、明治2年（1869年）には名を一楽と改め、翌々年には赦免されました。1888年、忠雄は74歳で亡くなり、その生涯は幕末から明治時代の激動の中で、尾張藩のあり方を揺るがす様々な変革の波と共に刻まれています。

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