炭酸ガス吸収装置

炭酸ガス吸収装置とは

炭酸ガス吸収装置（Carbon dioxide scrubber）は、二酸化炭素（CO2）を吸収・除去する装置の総称です。この装置は、工業プラントの排気ガス処理、閉鎖空間での生命維持装置、さらには二酸化炭素回収・貯留プロセスなど、幅広い分野で利用されています。地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、炭酸ガス吸収装置は、その重要な役割を担っています。

技術

アミンスクラビング

アミンスクラビングは、発電所などの排気ガスから二酸化炭素を除去する主要な技術の一つです。この技術では、アミン（特にモノエタノールアミン）の冷却溶液が用いられます。アミンは、低温で二酸化炭素と結合し、高温でその結合を解放する性質を持っています。

具体的には、以下のプロセスで二酸化炭素が分離されます。

1. 冷却されたアミン溶液を排気ガスに接触させ、二酸化炭素を溶液に吸収させます。
2. 二酸化炭素を吸収した溶液を加熱し、二酸化炭素を放出させます。
3. 再生されたアミン溶液は、再び二酸化炭素の吸収に利用されます。

この技術は、二酸化炭素を効率的に除去できる一方で、初期投資や運用コストが高いという課題があります。

鉱物とゼオライト

特定の鉱物やゼオライトも、二酸化炭素を可逆的に結合する能力があります。これらの鉱物は、酸化物や水酸化物であり、二酸化炭素は炭酸塩として結合されます。例えば、酸化カルシウムは二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成します。

この原理を利用したプロセスには、カルシウムルーピングがあります。また、蛇紋石やカンラン石といった鉱物、分子篩も同様の機能を発揮します。

これらの鉱物を用いたスクラブ処理は、排ガスや空気中の二酸化炭素を除去し、制御された環境で二酸化炭素を放出することができます。特に、クラフトパルプの変形版では、水酸化ナトリウムをベースにした溶液で二酸化炭素を吸収し、苛性化プロセスを経て石灰に移行させます。さらに、石灰を窯で加熱することにより、二酸化炭素を再放出させることができます。

水酸化ナトリウム

水酸化ナトリウムを用いた二酸化炭素回収プロセスも研究されています。このプロセスでは、まず水酸化ナトリウム溶液で二酸化炭素を吸収し、炭酸ナトリウムを生成します。


2NaOH(aq) + CO2(g) → Na2CO3(aq) + H2O(l)


続いて、炭酸ナトリウムを水酸化カルシウムと反応させ、水酸化ナトリウムを再生するとともに、炭酸カルシウムを沈殿させます。


Na2CO3(aq) + Ca(OH)2(s) → 2NaOH(aq) + CaCO3(s)


その後、沈殿した炭酸カルシウムを加熱し、二酸化炭素を放出させます。


CaCO3(s) → CaO(s) + CO2(g)


最後に、酸化カルシウムを水和させ、水酸化カルシウムを再生します。


CaO(s) + H2O(l) → Ca(OH)2(s)

水酸化リチウム

水酸化リチウムも、二酸化炭素を吸収する能力を持つ強塩基です。この物質は、宇宙機や麻酔器など、特に閉鎖空間での二酸化炭素除去に用いられます。水酸化リチウムは、二酸化炭素と反応して炭酸リチウムと水を生成します。


2LiOH(s) + CO2(g) → Li2CO3(s) + H2O(g)


水酸化リチウムは、従来のカルシウムベースの製品と比較して、安全性や利便性の面で優れていると評価されています。

過酸化リチウムや超酸化カリウムは、二酸化炭素を吸収するだけでなく、酸素を放出する特性も持っており、生命維持装置などで有用です。また、オルトケイ酸リチウムは、二酸化炭素回収とエネルギー貯蔵の両面で注目を集めていますが、炭酸塩を生成するためには高温が必要です。

再生二酸化炭素除去システム

スペースシャトルのオービターには、再生型の二酸化炭素除去システムが搭載されています。このシステムは、消耗品を使用せずに二酸化炭素を継続的に除去できるため、ミッション期間の延長に貢献しています。

金属酸化物吸着剤を用いるこのシステムは、二酸化炭素を吸着した後、加熱することで吸着剤を再生します。

活性炭

活性炭も炭酸ガス吸収装置として利用できます。二酸化炭素濃度の高い空気を活性炭層に通すことで、二酸化炭素を吸着させることができます。活性炭が飽和した後は、低濃度の空気を送ることで再生可能です。

金属有機構造体

金属有機構造体（MOF）は、二酸化炭素の吸着による回収・隔離のために研究されています。真空圧力スイングプロセスを用いることで、MOFは排ガス中の二酸化炭素を効率的に分離することができます。

拡張エアカートリッジ

拡張エアカートリッジは、リブリーザーに装着できる使い捨ての吸着剤容器です。

その他の方法

このほかにも、藻類を充填したバイオリアクター装置、ガス分離膜、逆熱交換器など、さまざまな二酸化炭素除去技術が研究・開発されています。

まとめ

炭酸ガス吸収装置は、地球温暖化対策において重要な役割を担う技術です。アミンスクラビング、鉱物、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、再生システムなど、様々な技術が存在し、それぞれに特性があります。これらの技術開発により、より効率的で持続可能な二酸化炭素回収・貯留が実現されることが期待されます。

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