無線パケット通信

無線パケット通信と日本のテレターミナルサービス

無線パケット通信は、デジタルデータを複数の小さなデータ単位（パケット）に分割し、無線で送信する技術です。この技術は、1970年代のハワイ大学ALOHAnetにおける研究が起源であり、ランダムアクセス方式の効率化や衝突検出・再送信プロトコルといった重要な進歩をもたらしました。これらの技術は、現在のバス型イーサネットなどの基盤となっています。

その後、アメリカで商用サービスが開始され、世界中に広まりました。2000年代に入ると、衛星電話や携帯電話との共用サービスが一般的になり、無線パケット通信は私たちの生活にますます浸透していきました。

日本のテレターミナル

日本で無線パケット通信を代表するシステムとして、テレターミナルがあります。テレターミナルは双方向無線通信システムで、有線パケット通信網や一般電話網と接続可能でした。小ゾーン方式を採用し、基地局と移動局がそれぞれ割り当てられた周波数帯を使用していました。具体的には、基地局が838.0125～842.9875MHz、移動局が893.0125～897.9875MHzの周波数帯を12.5kHz間隔で使用し、最大出力は基地局が20W、移動局が5Wでした。変調方式は直接FSK（周波数偏移変調）でした。

しかし、携帯電話やPHSの普及により、移動体データ通信が容易になり、テレターミナルの利用者は伸び悩み、多くの事業者は携帯電話会社に営業譲渡され、サービスを終了しました。テレターミナルで使用されていた周波数帯域はその後、携帯電話サービスなどに転用されました。

主要なテレターミナル端末

テレターミナルでは、様々な端末が利用されていました。代表的な端末としては、以下のものがあります。

メサージュ (MESSAGE): モデム内蔵のペン入力手書き情報端末です。手書き文字をそのままFAX送信したり、テキスト文字を音声に変換して電話をかける音声伝言機能、ポケベル送信機能、双方向文字通信機能などを備えていました。当時としては最先端の機能を誇っていました。
Qメール: 小型で双方向文字通信が可能な無線呼び出し機です。
PCカード型: ノートパソコンと接続して通信を行うためのPCカードです。モトローラのPM100D(PCMCIA型、1997年2月発売)などが代表的です。
無線ファクシミリ: PC-9801シリーズのノートパソコンにテレターミナル機能を搭載したRC-9801(1991年10月発売)などが存在しました。

サービス会社とサービス終了

日本でテレターミナルサービスを提供していた主な企業としては、日本シティメディアと関西シティメディアが挙げられます。

日本シティメディア
1989年12月20日: 東京23区内で9.6kb/sのサービス開始
1996年12月: 19.2kb/sの「データTAC」方式のサービス開始
1998年7月1日: NTT移動通信網（現NTTドコモ）に営業譲渡
2000年7月31日: テレターミナルサービス終了

関西シティメディア
大阪ガス、関西電力、松下電器産業(現パナソニック)などの出資により設立。資本金7.15億円。
1997年2月1日: 大阪市内で19.2kb/sの「データTAC」方式サービス開始
1998年7月1日: 関西セルラー（現KDDI）に営業譲渡
1999年: テレターミナルサービス終了

これらの企業は、携帯電話事業者への営業譲渡を経て、テレターミナルサービスを終了しました。これは、携帯電話やPHSの普及による市場環境の変化を反映した結果と言えるでしょう。

無線パケット通信の現在と未来

無線パケット通信は、テレターミナルサービスの終了後も、無線LANや携帯電話、そして様々な無線通信技術の基礎として発展を続けています。 今後の無線通信技術の進化においても、パケット通信技術は重要な役割を果たし続けるものと考えられます。 この技術の進化は、より高速で安定した、そして様々なアプリケーションに対応できる無線通信環境の実現に貢献していくでしょう。

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