熹平石経

熹平石経：後[[漢]]時代の儒教経典を刻んだ石碑

熹平石経は、後[[漢]]時代の霊帝時代、洛陽の太学門外に建立された石碑です。儒教の七経『易経』『論語』『尚書』『春秋』『公羊伝』『魯詩』『儀[[礼]]』が、隷書体で刻まれています。 一字石経、今字石経とも呼ばれ、現存する最古の石経として、中国の歴史、書道、そして儒教研究において非常に重要な位置を占めています。

建立の背景：経典の正誤と正訂作業

熹平4年（175年）、長年の時を経て、秦の焚書坑儒の影響なども加わり、儒教経典のテキストには誤りが多く、異本も数多く存在していました。このため、経典の正確なテキストを確定することが喫緊の課題となっていました。

そこで、五官中郎将の堂谿典、光禄大夫の楊賜、諫議大夫の馬日磾、議郎の蔡邕、張馴、韓説、太史令の単颺といった当時の著名な儒学者らが奏上し、霊帝の許可を得て、経典の正訂作業が行われることとなりました。蔡邕は、この作業の中心人物の一人でした。

蔡邕を筆頭とした学者のチームは、徹底的な調査と議論を経て、経典の最終的なテキストを決定。その成果を、石碑に刻むことで、後世の人々が正確な経典を学ぶことを可能にしました。この作業は、単なる写本作成以上の意義を持ち、後世の儒学研究に多大な影響を与えました。

石碑の規模と特徴

熹平石経は、光和6年（183年）に完成しました。46枚の石碑からなり、高さは約3メートル、幅は約1.2メートル。両面に文字が刻まれ、各石碑には35行、1行あたり70～78字が刻まれています。総文字数は20万字以上に及びます。

書風は謹厳で方正、書道作品としての芸術性は低いものの、漢代の典型的な公文書体を示す貴重な資料となっています。建立当初は、多くの学者が碑文を閲覧・書き写しに訪れ、その盛況ぶりは、一日千両以上の車が街路を埋め尽くすほどであったと伝えられています。

そして今日へ

董卓による長安遷都とそれに続く戦乱によって、熹平石経の大部分は破壊されてしまいました。しかし、1922年、洛陽太学遺址から100枚以上の残片が出土。これにより、漢代の経書研究や文字研究は大きく進歩しました。

現在、中国国立歴史博物館、上海博物館、陝西省博物館などの中国国内の博物館に加え、日本では台東区立書道博物館などにも、熹平石経の断片が収蔵され、大切に保存・研究されています。熹平石経は、単なる石碑ではなく、後[[漢]]時代の学問水準、政治状況、そして文化を伝える貴重な歴史的遺産であり続けています。その存在は、中国の歴史と文化を理解する上で、欠かせないものとなっています。

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