馬日磾

馬日磾（ば じつてい）

馬日磾（生年不詳 - 194年）は、後漢末期の政治家であり、儒学者としても知られています。字（あざな）は翁叔（おうしゅく）。司隷右扶風茂陵県（現在の陝西省興平市一帯）の出身で、名門馬氏の一族に連なります。族父（父の従兄弟）に、著名な学者である馬融（ばゆう）がいます。

生涯

後漢の名門、馬氏の一族に生まれた馬日磾は、幼い頃から族父である馬融の学問を受け継ぎ、その才能と学識によって官界で順調に昇進を重ねました。東観（とうかん）においては著作に携わる仕事に従事し、楊彪（ようひょう）、盧植（ろしょく）、蔡邕（さいよう）らと共に、『漢記』の編纂を補佐する役割を果たしました。また、熹平4年（175年）からは、儒教の経典である六経の文字を正す事業にも参加しました。この事業の成果として、都の開陽門外に建てられた石経（熹平石経）の礼記碑には、議郎（ぎろう）であった蔡邕と共に、諫議大夫（かんぎたいふ）であった馬日磾の名が刻まれたと伝えられています。

中平5年（188年）には、射声校尉（しゃせいこうい）から太尉（たいい）に任命されましたが、翌年には免官となりました。しかし、初平2年（191年）には、太常（たいじょう）から再び太尉に任命されています。初平3年（192年）、董卓（とうたく）の暗殺を嘆いた蔡邕が王允（おういん）によって投獄されると、馬日磾は、蔡邕が執筆を望んでいた漢の歴史書が必ずや後世に残る大事業になると王允を説得し、蔡邕の免罪を嘆願しました。しかし、王允はこれを受け入れませんでした。馬日磾は退席した後、周囲の人々に「王允公（司徒王允）の世は長くは続かないだろう。善人は国の根本であり、著作は国の典範である。その根本を滅ぼし、典範を廃して、それが長く続くはずがない」と語ったと伝えられています。

李傕（りかく）が王允を殺害して政権を掌握すると、馬日磾は太傅（たいふ）・録尚書事（ろくしょうしょじ）に任命され、持節（じせつ）として山東（さんとう）の諸侯を慰撫（いぶ）する役目を拝命しました。当時、袁術（えんじゅつ）は寿春（じゅしゅん）におり、朝廷は彼を左将軍（さしょうぐん）・仮節（かぜつ）とし、陽翟侯（ようできこう）に封じていましたが、袁術は朝廷の勅命に従わず、馬日磾に強要して配下の者たちを自分の公府に招聘（しょうへい）させようとし、節（せつ）を奪い取りました。また、馬日磾が辞任を願い出ましたが、袁術は彼を拘留して帰さず、さらに自分の軍師となるよう強要しました。このため、馬日磾は屈辱に耐えかね、憤慨して死去しました。この時、馬日磾に招聘された人物として、孫策（そんさく）、華歆（かきん）、朱治（しゅち）らの名が記録されています。

建安年間に入ってから、朝廷では馬日磾に対し礼を尽くした葬儀を行うべきだという議論が起こりましたが、孔融（こうゆう）は、馬日磾が上公の位にありながら、袁術のような人物に媚びへつらったためにこのような事態になったのだと反対し、この議論は実現しませんでした。

名前について

現代中国で使用されている普通話（標準中国語）では、「日」の拼音（ピンイン）はrìですが、金日磾（きんじつてい）と馬日磾の「日」だけはmìと発音され、「冪」や「密」と同じ発音になります。

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