牧野忠訓

牧野忠訓

牧野忠訓（まきの ただくに）は、江戸時代末期から明治時代初期にかけての越後長岡藩の藩主です。長岡藩牧野家の宗家としては第13代にあたります。

生涯

天保15年（1844年）8月15日、丹後宮津藩主であった松平宗秀の四男として江戸で生を受けました。安政5年（1858年）12月、当時長岡藩の第11代藩主を務めていた牧野忠恭の養嗣子となり、将来の藩主としての道を歩み始めます。文久元年（1861年）12月には従五位下、玄蕃頭に叙任されました。

慶応3年（1867年）7月11日、養父・忠恭が隠居したことに伴い、家督を相続して長岡藩の第12代藩主となります。これと同時に、官職も駿河守に転任しました。

若くして藩主となった忠訓は、養父と同様に、家老格として藩政を担っていた河井継之助に厚い信頼を寄せていました。藩の財政改革、軍制の近代化、そして領民の生活に関わる民政といった藩の重要な諸政策の全てを、河井に委ねていたと言われています。

戊辰戦争と長岡藩

慶応4年（1868年）、日本の政治状況が激変し、戊辰戦争が勃発します。忠訓は、家老の河井継之助と共に、長岡藩を戦乱に巻き込まないよう和平の道を模索しました。奥羽越列藩同盟と新政府の双方との関係を慎重に保ちながら、公武の調和を図り、争いを避けるための建言書を新政府に提出しました。さらに、河井自身が新政府の北越平定軍の陣へ直接乗り込み、停戦を求める交渉を試みます。しかし、これらの平和的な努力は、残念ながら新政府によって聞き入れられることはありませんでした。

和平交渉が不調に終わったため、忠訓は慶応4年5月4日、河井と共に奥羽越列藩同盟への参加を決断し、新政府軍との戦闘に臨むことになります。長岡藩兵は河井の指揮のもと、榎峠の戦いなどで奮戦し、一時は新政府軍を圧倒する場面も見られました。しかし、近代的な兵器と圧倒的な物量を誇る新政府軍の前には抗しきれず、5月19日には長岡城が落城してしまいます。忠訓は養父・忠恭らと共に、会津へと逃れました。

その後、長岡藩は劣勢を挽回すべく、河井が立案した八丁沖を渡る奇襲作戦を実行します。この奇襲により、7月24日には一時的に長岡城を奪還することに成功しました。しかし、この激戦の最中に河井が重傷を負ってしまい、長岡軍の士気は著しく低下してしまいます。その結果、7月29日には再び新政府軍によって長岡城を奪われることとなりました。忠訓や河井らは再び会津へ退避しますが、ここで河井は負傷がもとで死去します。

忠訓はさらに北の陸奥仙台藩へと逃れましたが、最終的には9月23日、新政府軍に降伏しました。

戦後の処遇と晩年

新政府に弓引いた「逆賊」として、忠訓は厳しい処分を受けることとなります。自身は謹慎を命じられた上、長岡藩は所領と藩主の官位を全て没収されるという厳しい裁きが下されました。しかし、牧野氏が代々続く名門であることなどが考慮され、全くの取り潰しではなく、藩の存続が許される道が開かれます。明治元年12月22日（1869年2月3日）、忠訓は正式に藩主の地位を廃され、代わりに養父・忠恭の四男である牧野忠毅が新たな藩主として就任しました。所領は大幅に減らされ、2万4000石とされた上で、長岡藩は存続しました。

明治2年（1869年）9月には、謹慎処分を解かれて罪を許されました。その後は「観山」という雅号を用いて静かに過ごしたと言われています。明治5年（1872年）には、かつての従五位の官位への復帰も許されました。

明治8年（1875年）6月16日、長岡の地でその生涯を閉じました。享年32歳という短い人生でした。

系譜

父母

実父：松平宗秀
実母：大久保偶子（大久保忠真の七女）
養父：牧野忠恭

正室

つね子（牧野忠恭の娘）

養子

* 牧野忠毅（牧野忠恭の四男）

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