松平宗秀

松平宗秀

松平宗秀（まつだいら むねひで）は、江戸時代後期に活躍した譜代大名で、丹後国宮津藩の第6代藩主です。本庄松平家9代当主でもあります。その生涯は、幕末の動乱期における政治的変動と密接に結びついており、老中としての活動や、安政の大獄への関与、そしてその後の失脚と復帰など、波乱に満ちたものでした。

生涯

文化6年（1809年）に、宮津藩4代藩主・松平宗允の三男として生まれました。幼くして父を亡くしたため、叔父の宗発が藩主となりましたが、天保11年（1840年）に家督を相続し、宮津藩主となりました。

安政の大獄と失脚

大老・井伊直弼の下で寺社奉行を務め、安政の大獄を主導する役割を担いました。この時期には、北町奉行の石谷穆清、勘定奉行の池田頼方、大目付の久貝正典、目付の神保長興らと共に、多くの志士を処罰しました。その後、大坂城代を経て京都所司代に任命されましたが、朝廷内からの強い反対を受け、実際に赴任することはできませんでした。この一件で、一時的に幕府内で高い格式を得るものの、安政の大獄に関与した責任を問われ、その格式も剥奪されました。

老中への就任と第二次長州征討

その後、老中に就任し、阿部正外と共に幕府軍を率いて上洛しました。徳川慶喜を江戸へ連行し、京都を幕府の統制下に置こうとしましたが、失敗に終わります。慶応2年（1866年）の第二次長州征討では、幕府軍の指揮を執り、広島に出陣しました。しかし、戦況が不利であることを悟り、捕虜にしていた長州藩の家老、宍戸璣と小田村伊之助を独断で釈放し、和平工作を試みました。この行動が発覚し、老中を罷免され、家督を五男の宗武に譲って隠居謹慎となりました。

維新後の活動

鳥羽・伏見の戦い後、宮津藩が旧幕府側についた責任を問われた際、長州藩が宗秀による宍戸・小田村の釈放を新政府に申し入れ、藩の重臣2名の切腹が免れることになりました。維新後は新政府に出仕し、伊勢神宮の大宮司などを務め、明治6年（1873年）に65歳で亡くなりました。

年表

文化6年（1809年）：誕生
天保11年（1841年）：家督相続
天保12年（1842年）：奏者番
天保14年（1844年）：奏者番を免ぜられる
弘化3年（1846年）：奏者番（再役）
嘉永6年（1852年）：富士登山を強行し登頂
安政5年（1858年）：寺社奉行兼任
万延元年（1860年）：奏者番兼寺社奉行を免ぜられる、大坂城代拝命
文久2年（1862年）：大坂城代免、京都所司代拝命、所司代免、溜間詰格
文久3年（1863年）：溜間詰格から雁間詰に降格
元治元年（1864年）：老中
慶応2年（1866年）：老中免職、隠居
明治6年（1873年）：死去

人物

宗秀は神道家の井上正鉄に師事するなど、宗教や精神的なものに関心を持っていたようです。

家臣

宇治川武兵衛
河瀬秀治

宗秀の富士登山

宗秀は、富士登山を行った近世大名として知られています。富士宮市の古記録「袖日記」には、宗秀が参勤交代の途中で富士山に登ることを思い立ち、幕府に許可を得て登山を試みたものの、当初は「馬返し」という地点までしか許可されなかったと記されています。しかし、宗秀は嘉永5年（1852年）に幕府に内緒で登山を強行し、見事登頂を果たしました。この記録は、近世大名が富士登山を行った唯一の記録として貴重です。

系譜

父：松平宗允
母：不詳
養父：松平宗発
正室：松平乗全娘
継室：偶子 - 大久保忠真七女
四男：牧野忠訓 - 牧野忠恭の養子
継々室：盈子 - 松平輝延娘
生母不明の子女
男子：那須資興 - 那須資礼の養子
五男：松平宗武
男子：松平乗武
七男：朽木綱鑑 - 朽木為綱の養子
女子：富田知興室
養子：松平宗賢

登場作品

NHK大河ドラマ
徳川慶喜（1998年） - 演：坂西良太
花燃ゆ（2015年） - 演：諏訪太朗
* 西郷どん（2018年） - 演：山田明郷

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