牧野忠恭

牧野 忠恭

文政7年（1824年）9月1日に、三河国西尾藩主であった松平乗寛の三男として江戸で生まれました。その後、越後国長岡藩の第10代藩主である牧野忠雅の養嗣子となります。忠恭には次兄の牧野忠衛がおり、後に三根山領主となりました。若き日の忠恭には、小林虎三郎の父にあたる小林親真が一時、附役を務めていたことが武鑑から読み取れます。

天保11年（1840年）4月28日には、当時の将軍徳川家慶に初めて拝謁。同年12月16日には、従五位下玄蕃頭に叙任されました。安政5年（1858年）10月25日、養父である忠雅の死去を受けて、長岡藩牧野家の家督を継承し、第11代藩主となります。

藩主となった後、忠恭は幕府内で重要な役職を歴任します。万延元年（1860年）6月25日には奏者番に就任。続いて文久2年（1862年）3月24日には寺社奉行の加役となり、同年8月24日には京都所司代に抜擢されました。京都所司代就任に伴い、従四位下侍従に昇進を果たします。しかし、文久3年（1863年）6月11日、当時の京都は政治情勢が不安定で騒乱が続いており、「長岡藩のような小藩では対応が難しい」との判断から、京都所司代を辞職しました。

同年9月13日には老中に就任し、12月24日には外国事務を取り扱うことも命じられます。この老中在任中、忠恭は家臣の河井継之助を公用人として厚く信任し、藩政改革を断行しました。元治元年（1864年）7月22日には勝手用掛も命じられますが、慶応元年（1865年）4月13日、幕政の難題が山積する状況を受けて、老中職を退きました。京都所司代と老中の辞任は、いずれも河井継之助の進言によるものだったと伝えられています。

慶応3年（1867年）7月11日、忠恭は隠居し、養子の忠訓に家督を譲りました。隠居後は雪堂と号しました。その後の北越戦争を経て謹慎生活を送りますが、明治時代に入ってから許されます。明治8年（1875年）2月には、四男の忠毅が隠居したことに伴い、異例ではありますが再び家督を相続することとなりました。そして明治11年（1878年）9月1日、55歳で生涯を終えました。家督は五男の忠篤が継承しました。

人物像

1982年に行われた済海寺における牧野家墓地の改葬に伴う緊急遺骨調査によれば、忠恭の遺骨は以前の改葬の影響で保存状態は良好ではなかったとされます。しかし、尺骨から推定された身長は149.1cmとされており、太さも細いことから、牧野忠精の長男である牧野忠鎮に並ぶほど華奢な体格であったと推定されています。

系譜

実父: 松平乗寛
養父: 牧野忠雅
正室: 籌（牧野忠雅養女、太田資始娘）
側室: 千代
主な子女:
牧野忠毅（四男、母は千代）
牧野忠篤（五男）
牧野彜子（次女、牧野忠訓室）
牧野総子（牧野忠泰正室）
牧野好子（九女、本庄寿巨継室後に離縁）
牧野美子（牧野貞寧正室）
養子: 牧野忠訓（松平宗秀の四男）

参考文献

済海寺遺跡調査団『港区三田済海寺 長岡藩主牧野家墓所発掘調査報告書』（1986年・東京都港区教育委員会）

関連項目

峠 最後のサムライ（仲代達矢が牧野忠恭を演じた作品）

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