狗留孫峡

狗留孫峡（くるそんきょう）とは

宮崎県えびの市を流れる川内川の上流部にある、約10kmの峡谷です。一般的には「クルソン峡」と表記されることが多いです。峡谷の源流は熊本県の白髪岳にあり、四万十層の基盤岩が川の流れによって侵食され、100mを超える断崖や奇岩、巨石が点在する景観を作り出しています。峡谷一帯は原生林に覆われており、ヤマメやオオサンショウウオなどの貴重な動植物が生息しています。キャンプ場などの施設も整備され、バイクツーリングを楽しむ人々も訪れます。また、谷の奥には、栄西が創建したとされる日本で2番目に古い禅寺「端山寺」の跡地があり、歴史と自然が調和した場所として知られています。

地元では、親しみを込めて「オクロソン（オクルソン）」とも呼ばれています。

伝説

拘留孫仏誕生窟

狗留孫峡には、過去七仏の一人である「拘留孫仏」が生まれたとされる場所があります。この地は1300年前から修行者が訪れていたと伝えられ、古くから神聖な場所として崇められてきました。

石卒塔婆（狗留孫岩）

峡谷には、八大龍王のうち健磐龍王と娑伽羅龍王が住んでいたという伝説があります。健磐龍王が拘留孫仏に願って建てた石卒塔婆には大般若経が、娑伽羅龍王が観音菩薩にお願いして建てた石卒塔婆には法華経が書かれていたとされています。しかし、ある時、娑伽羅龍王が巡礼者の悪口に怒り、観音菩薩が建てた石卒塔婆を三つに折って飛ばしてしまい、その一つが落ちた場所が立石権現（立石神社）になったという言い伝えがあります。

また、この狗留孫岩は古くから有名で、神武天皇も見物に訪れた際、「暫しこそ端山繁山茂けれども　神路の奥に道あるものを」という和歌を詠んだと伝えられています。

歴史

拘留孫神社

建久2年（1191年）、臨済宗の開祖である栄西禅師は、中国から帰国後、観音様のお告げに従い、この地の狗留孫岩を訪れました。栄西禅師は、日本で最初の禅寺である宝月山福慧光寺を建立した後、この地にクルソン権現社（後の多宝院端山寺、現在の羽山積神社）と天狗の宮（金毘羅社）を建立しました。このクルソン権現社は、日本で2番目に古い禅寺とされています。

栄西禅師が初めて狗留孫岩を訪れた際、クルソン権現社の南にある岩穴で、讃岐の金毘羅さんの化身と出会ったとされ、その記念として「天狗の宮」が建てられました。「天狗の宮」は、天狗が住む場所と考えられていたため、女人禁制で、男性も午後4時以降の参拝は禁じられていました。

狗留孫山多宝院端山寺と里坊

栄西禅師亡き後、狗留孫神社は荒廃していましたが、応永20年（1413年）に尊海上人が真言宗に改め、狗留孫山多宝院端山寺を興しました。端山寺のご神体は、栄西禅師が熊野権現を勧請したとされる阿弥陀、薬師、観音の三尊です。その後、いつの頃からか山上にある端山寺に寺番を置き、杉水流佐山に里坊と釈迦堂を建て、座主が移り住むようになりました。里坊とは、山寺の僧侶が人里に構える僧坊のことです。

狗留孫山多宝院端山寺と里坊の廃寺

幕末になると、飯野村は島津藩領内にあり、平田篤胤の神道思想が広まり、王政復古の動きが活発化しました。その影響で島津藩は強制的な廃仏毀釈を進め、明治元年（1867年）には、政府から僧形の別当や社僧の還俗令が出され、狗留孫権現社は仏像を神鏡に変えられました。また、鰐口や梵鐘などの仏具も取り除かれ、数百年も吊るされていた寛正4年（1463年）の鰐口も廃棄されることになりました。明治3年（1870年）には、端山寺、里坊ともに廃寺となりました。

羽山積神社

明治8年（1875年）、狗留孫山多宝院端山寺は羽山積神社と改名され、現在も地域の人々に親しまれています。

関連項目

川内川
加久藤盆地

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