玉隠英璵

玉隠英璵（ぎょくいんえいよ）

玉隠英璵は、室町時代後期から戦国時代初期にかけての臨済宗の僧侶で、鎌倉五山の文化を彩った重要な人物です。永享4年（1432年）に生まれ、大永4年8月1日（1524年8月29日）に93歳で没しました。道号を玉隠、法諱を英璵（永璵）といい、懶庵・玉澗・聴松軒といった号も持っていました。

生涯

玉隠英璵は信濃国東部の武家、滋野氏の出身とされています。鎌倉の禅興寺明月院で器庵僧璉に師事し、その跡を継いで同院の宗猷庵に住みました。応仁の乱後の鎌倉五山を代表する文人として知られ、漢詩や書に優れた才能を発揮しました。

また、玉隠英璵は武将で文化人としても知られる太田道灌と親交があり、道灌を通じて万里集九とも親しくなりました。文明18年（1486年）に万里集九が鎌倉を訪れた際には、玉隠の宗猷庵が宿所として提供されています。延徳3年（1491年）には、金沢文庫の検査に立ち会い、明応7年（1498年）には将軍足利義高によって建長寺の164世住持に任じられました。その後、明月院に戻り、禅興寺の再建に尽力しました。さらに、安房国の里見義豊の才能を早くから見抜き、親交を深めました。

大永4年（1524年）に93歳で亡くなった後、朝廷から「宗猷大光禅師」の諡号が贈られました。

文化人としての側面

玉隠英璵は、禅僧としての活動だけでなく、文化人としても多才な一面を持っていました。明月院宗猷庵にある墓所には、生前の玉隠自らが書いた自賛の肖像画が残されています。また、建長寺所蔵の「西来庵修造勧進状」や浄智寺所蔵の「西来庵修造勧進状」は、共に重要文化財に指定されており、これらの勧進状には、パスパ文字で「玉隠」の音を表記した落款が捺されており、玉隠の海外への関心の高さが伺えます。

晩年まで自身の言行を記した『玉隠和尚語録』を遺し、東京大学史料編纂所には『文明明応年間関東禅林詩文等抄録』という仮題が付けられた手稿本が所蔵されています。さらに、親交のあった画僧賢江祥啓の「巣雪斎図」や「喜江禅師像」には画賛を記し、雪舟等楊の「漁樵斎図」にも画賛を記しています。

これらの活動を通して、玉隠英璵は禅宗の教えを広めると同時に、当時の文化や芸術の発展にも大きく貢献しました。彼の幅広い活動は、室町時代の文化を理解する上で欠かせない要素となっています。

参考文献

玉村竹二『五山禪僧傳記集成』（講談社、1983年）
「玉隠英璵と賢江祥啓 室町時代の鎌倉五山文化概説に代えて」（『鎌倉の詩画軸 ―室町水墨画と五山禅僧の周辺―』 鎌倉国宝館、1986年）
西岡芳文「建長寺の学問 ―玉隠英璵を中心に」（村井章介編 『東アジアのなかの建長寺－宗教・政治・文化が交叉する禅の聖地』 （勉誠出版、2014年））

事典類

三山進「玉隠英璵」（『鎌倉事典』（東京堂出版、1976年））
黒坂周平「玉隠英璵」（『長野県歴史人物大事典』（郷土出版社、1989年））
市古貞次 他編『国書人名辞典 1』（岩波書店、1993年）
* 佐脇栄智「玉隠英璵」（『戦国人名辞典』（吉川弘文館、2006年））

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